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五十五篇

八姦

第 9 篇

およそ臣下が奸計を実現する道には八つの方法がある。第一に「同床」という。何を「同床」と呼ぶのか。すなわち、尊い后妃、寵愛される美人、へつらい巧みな色仕掛けの徒、これらは君主が夢中になる者たちである。彼らは君主が安閑と享楽にふける時、酒に飽き腹も満たされた機会に乗じて、自らの要求を君主に申し出る。これは必ず君主を従わせる手段である。臣下が内部から金銀や玉器で彼らを贿赂し、君主を惑わせさせる。これを「同床」という。第二に「在旁」という。何を「在旁」と呼ぶのか。すなわち、人を楽しませる歌舞音曲の徒、弄ばれる侏儒、君主の側近に仕える者たち、これらの者は君主が命令を下す前から「はい」と連呼し、使う前から「承知しました」と応じ、先んじて君主の意図を推し量り、顔色を窺い心を読む。これらの者は皆、行動を共にし、声を同じくし、口を揃え、足並みを揃えて君主の心を変えようとする者である。臣下が内部から金銀玉器や珍奇な玩物で彼らを贿赂し、外部では彼らのために不法な事を行い、彼らに君主を腐敗させる。これを「在旁」という。第三に「父兄」という。何を「父兄」と呼ぶのか。すなわち、君主の叔父や兄弟、公子たち、これらは君主が親しく愛する者である。朝廷の大臣や官吏、これらは君主が共に謀り決断する者である。これらの者は皆、全力を尽くして謀議に参与し、君主は彼らの言うことを必ず聞く。臣下が音楽や美色、美女で君主の叔父や兄弟、公子たちをもてなし、巧みな言葉で朝廷の大臣や官吏を懐柔し、内々に事を約束し、事が成就すれば彼らに昇進や加禄を与え、その心を励まし、彼らに君主を欺かせる。これを「父兄」という。第四に「養殃」という。何を「養殃」と呼ぶのか。すなわち、君主は華麗な宮殿や楼台、池や楼閣を飾ること、美女を着飾らせ、犬馬などの玩物を飼いならして心を楽しませることを好む。これらは君主の災いである。臣下が民力を尽くして宮殿や楼台、池や楼閣を飾り、税を重くして美女を着飾らせ犬馬を飼い、これによって君主を楽しませてその心を乱し、君主の欲望に従いながら、その中で私利を図る。これを「養殃」という。第五に「民萌」という。何を「民萌」と呼ぶのか。すなわち、臣下が公の財物をばらまいて民衆の歓心を買い、小恩小恵を施して百姓を買収し、朝廷や市井の民が皆自分を称賛するようにし、これによって君主を欺いて自己の欲望を実現する。これを「民萌」という。第六に「流行」という。何を「流行」と呼ぶのか。すなわち、君主は元来、言路を塞がれ、議論を聞くことが少なく、巧みな言葉に動かされやすい。臣下が諸侯の弁士をかき集め、国内の弁舌巧みな者を養い、彼らに言葉で自己の私利を図らせる。彼らは巧偽の言葉、流布する世論を作り出し、有利な情勢で君主を誘い、禍害で君主を脅かし、偽りの言葉をでっち上げて君主を貶める。これを「流行」という。第七に「威強」という。何を「威強」と呼ぶのか。すなわち、人民を統治する君主は、群臣百姓によって威勢と強力を形成する。群臣百姓が良いとするものを、君主は良いとし、群臣百姓が良いとしないものを、君主は良いとしない。臣下が剣を帯びた侠客を集め、命知らずの者を養い、自らの威勢を示し、公然と自分に従う者は必ず利益を得、従わない者は必ず死ぬと宣言し、これによって群臣百姓を脅かして自己の私利を推し進める。これを「威強」という。第八に「四方」という。何を「四方」と呼ぶのか。すなわち、人民を統治する君主は、国が弱小であれば大国に仕え、軍が弱小であれば強い軍を恐れる。大国が求めるものは、小国は必ず従い、強軍が圧力をかける所は、弱軍は必ず屈服する。臣下が税を重くし、国庫を使い果たし、自国を空にして大国に仕え、かつ大国の威勢を借りて自らの君主を誘導する。重い場合は兵を挙げて国境に集結させ内部から君主を制御し、軽い場合は度々大国の使者を派遣して君主を威嚇し、恐懼させる。これを「四方」という。これら八つの情況を総括すれば、臣下が奸計を実現する道であり、当代の君主が蒙蔽され劫持され、その全ての権力を失う原因である。注意深く審察せざるを得ない。

英明な君主は、内宮に対しては、その美色を楽しむがその請託は聞かず、私的な依頼をさせない。側近に対しては、その身体を使うが必ずその言葉を究明し、大げさな言辞をさせない。父兄や大臣に対しては、その意見を聞くが必ず事後に責任を負わせ、軽率な行動をさせない。観賞や享楽、珍奇な玩物に対しては、必ず正当な来歴のあるものにさせ、勝手に献上したり撤去したりすることを許さず、群臣に君主の意図を推測させない。恩恵や施しに対しては、国庫の財物を出し、穀倉を開き、民に利する事柄は全て君主自らが行い、臣下に私的に恩恵を施させない。遊説や議論に対しては、君主の好む者を称賛し、君主の嫌う者を非難する場合も、必ずその才能を考察し、その過失を審査し、群臣に互いに吹聴したり誹謗したりさせない。勇力ある者に対しては、軍中の功績に過分な賞を与えず、郷邑での私闘の勇猛はその罪を赦さず、群臣に私財で勇士を買収させない。諸侯の要求に対しては、法度にかなうものは従い、法度にかなわないものは拒否する。いわゆる亡国の君とは、国を持たないというのではなく、国を持ちながら全てを自らの思い通りにできないことを言う。臣下に外部から内部を制御させれば、君主は等しく国を失ったも同然である。大国の言葉に従うのは滅亡を免れるためだが、その結果は従わないよりも速く滅びるので、従わない。群臣は君主が従わないと知れば、外部の諸侯と結託しない。諸侯は君主が従わないと知れば、臣下がその君主を誣告する言葉を受け入れない。

英明な君主が官職、爵位、俸禄を設けるのは、賢才を抜擢し、有功の臣を奨励するためである。故に言う、賢才は厚い俸禄を享受し、重要な官職に就く。功績の大きな者は高い爵位を持ち、豊かな賞賜を受ける。賢才を任命する時はその才能を量り、俸禄を与える時はその功績に基づく。故に賢才は才能を誇示して君主に仕えることなく、有功の者は自らの事業を楽しみ、事は成功し功業は立てられる。今はそうではない。賢と不肖を考察せず、功績と労績を論じず、諸侯が重視する者を重用し、側近の請託に従い、父兄大臣が上に爵位や俸禄を求め、下に売り捌いて財利を収め私党を立てる。故に財利の多い者は金で官を買って顕貴となり、側近の関係のある者は請託によって重臣となる。功績ある大臣は論功行賞されず、官職の昇進は混乱して適切さを失う。故に官吏は公事をおろそかにして外援と結びつき、職務を捨てて財物に親しむ。故に賢才は怠けて努力せず、有功の者は意気消沈して事業を荒廃させる。これが亡国の風気である。