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四十九篇

経解

第 26 篇

孔子曰:「国に入りてその教えを知る。」その民、溫柔敦厚なる者は、『詩』の教えなり。疏通知遠なる者は、『書』の教えなり。広博易良なる者は、『楽』の教えなり。潔静精微なる者は、『易』の教えなり。恭倹荘敬なる者は、『礼』の教えなり。属辞比事に長ずる者は、『春秋』の教えなり。故に『詩』の失は愚、『書』の失は誣、『楽』の失は奢、『易』の失は賊、『礼』の失は煩、『春秋』の失は乱なり。その人、溫柔敦厚にして愚ならざるは、則ち深く『詩』に通ずる者なり。疏通知遠にして誣ならざるは、則ち深く『書』に通ずる者なり。広博易良にして奢ならざるは、則ち深く『楽』に通ずる者なり。潔静精微にして賊ならざるは、則ち深く『易』に通ずる者なり。恭倹荘敬にして煩ならざるは、則ち深く『礼』に通ずる者なり。属辞比事にして乱ならざるは、則ち深く『春秋』に通ずる者なり。

天子は天地と参(み)つとなり、その徳は天地に配し、利は万物に兼ね、日月と並びて明らかにし、四海を照らして隠す所なし。朝廷に在りては、則ち仁・聖・礼・義の序を講じ、燕処に在りては、則ち雅・頌の音を聴き、行歩に在りては、則ち佩玉の声あり、車に升るに、則ち鸞和の音あり。居処に礼あり、進退に度あり。百官各おのれを得、万事序をなす。『詩』に云う、「善人君子、その儀一なり。その儀一なれば、心正しく以て四方を正す。」とは、これを謂うなり。号令を発して民の悦ぶを「和」と謂い、上下相親しむを「仁」と謂い、民求むることなくして得る所あるを「信」と謂い、天地の害を除くを「義」と謂う。義と信、和と仁は、覇王の器なり。民を治むる志ありて器なければ、以て成すこと能わず。

礼は国を治むるに、衡の軽重に於けるが如く、繩墨の曲直に於けるが如く、規矩の方圆に於けるが如し。故に衡誠に懸けられなば、軽重に欺く可からず。繩墨誠に陳べられなば、曲直に欺く可からず。規矩誠に設けられなば、方圆に欺く可からず。君子礼義を審らかにすれば、奸詐をもって欺く可からず。故に礼を隆び、礼を率いるを、以て有道の士と謂い、礼を隆びず、礼を率いざるを、以て無道の民と謂う。礼は恭敬謙遜の本なり。故に宗廟を奉るに、則ち敬を致し、朝廷に入るに、則ち貴賤その位を異にし、家に処るに、則ち父子親しみ、兄弟和し、郷里に在るに、則ち長幼序をなす。孔子曰く、「君を安んじ民を治むるは、礼より善きは莫し。」とは、これを謂うなり。

故に朝觐の礼は、君臣の義を明らかにする所以なり。聘問の礼は、諸侯の相敬う所以なり。喪祭の礼は、臣子の恩を明らかにする所以なり。郷飲酒の礼は、長幼の序を明らかにする所以なり。婚姻の礼は、男女の別を明らかにする所以なり。礼は、以て乱の生ずる所を防ぐこと、猶お堤防の水を止むるがごときなり。故に旧堤防無用と為して之を壊す者は、必ず水敗あり。旧礼無用と為して之を去る者は、必ず乱患あり。故に婚姻の礼廃れば、則ち夫婦の道苦しく、淫辟の罪多し。郷飲酒の礼廃れば、則ち長幼の序失われ、争闘の獄繁し。喪祭の礼廃れば、則ち臣子の恩薄く、死を背き生を忘るる者多し。聘覲の礼廃れば、則ち君臣の位失われ、諸侯悪行し、倍畔侵陵の敗起ころ。

故に礼の教化は微にして、邪悪未だ形ならざるに於て之を止む。人をして日に善に遷り、罪に遠ざかりて自ら知らざらしむ。故に先王、之を貴ぶ。『易』に曰く、「君子始を慎む。差し毫釐なれば、謬ること千里。」とは、此れを謂うなり。