第四十四齣 急難
第44出 急難
【菊花新】(杜麗娘登場)朝妝を整える時、夢を占う鵲の声高く鳴き、暇に任せて、笑みを帯びてそっと金の簪を打つ。香炉の煙は秋の光に揺れ、泥金の喜報を待ち望み、この胸の内はひそかに焦る。「幽鬼が世に出ることを願い、貧しく落ちぶれて科挙の及第を待つ。夫が栄えれば妻もまた顕貴となり、一心に事の成り行きを凝視するとは如何に?」我が杜麗娘、柳郎に従って科挙の受験に行き、折よく天子が賢士を招いたのだが、ただこのところ未だに喜報が届かずにいる。まさに:「長安は咫尺の地ながら千里の如く遠く、夫は遥か万里の彼方にありながら、天下第一の人なり。」
【出隊子】(柳夢梅登場)試験場のことは偶然が重なり、やむなく戦乱が起こり禍の芽を招く。泥金の喜報を待ち望みながら、玉のように美しい妻を遅らせてしまい、彼女は地の窟で待ち、人に従って九重の天へと直登しようとする。一筋の離魂、江上の霧、夕べの潮の如し。(互いに見合う)(杜麗娘)柳郎、お帰りなさい。高車駟馬に乗り、錦を着て故郷に帰るのを望んでいたのに、何故徒歩で戻ってこられたのですか?(柳夢梅)聞いてくれ:
【瓦盆児】科挙に遅れてしまい、試験場は既に閉ざされ、多くの受験生は散ってしまった。(杜麗娘)ああ、遅れたのか。(柳夢梅)幸いなことに旧友に出会った。(杜麗娘)補欠の席を得られたのですか?(柳夢梅)彼の船一杯の明月のおかげで、失われた明珠を再び拾い上げたのだ。(杜麗娘喜ぶ)それは良い。揭榜はありましたか?(柳夢梅)まさに龍楼に奏上し鳳榜が開かれる時、思わぬことが起きた。(杜麗娘)如何なる思わぬことですか?(柳夢梅)お前は知らないだろう、大金国の軍が兵を起こし、既に淮揚一帯に押し寄せてきたのだ。慌ただしさの中、軍営の警戒は厳重で、やむなく科挙を一時棚上げにし、ついにお前の夫人の鳳冠霞帔を遅らせてしまった。(杜麗娘)遅れるのも一時のことです。ただお尋ねします、淮揚という地は、我が父が管轄する地域ではありませんか?(柳夢梅)まさにそうだ。(杜麗娘泣く)天よ、我が父母は如何なる有様か!(泣き続ける)(柳夢梅)まさにかくも生々しく、痛切で、腸も断たれる。例えばお前が黄泉路にあった時、心焦がれたことはあったか?(杜麗娘)もう良い。一言、言い出しかねることがある。(柳夢梅)遠慮なく言え。(杜麗娘)柳郎、揭榜の日はまだ遠く、あなたに淮揚へ行き父母の消息を尋ねてもらいたいのです。お受けいただけますか?(柳夢梅)謹んでお前の指示に従おう。ただ小姐が心配だ。(杜麗娘)構いません、自分で何とかします。(柳夢梅)ではすぐに出発しよう。
【榴花泣】(杜麗娘)白雲の下は親の住む処、我が孤独な影はなお昔の梅の梢に残る。我が香魂かくも寂しいと言えど、誰か知ろう既にお前の柳の枝に消え去ったことを。遠き千里の揚州、我は常に一筋の幽魂漂う。生き返った事は過ぎ去り、父母よ、我がなお人の世に生きていると聞けば、必ずや大いに驚くことでしょう。何の理由もなく女婿が訪ねて来るのは、半ば空よりの鵲の橋の如し。
【前腔】(柳夢梅)我は行きつ止まりつ、両方の地に心を引かれる。旅館に留まり多嬌なる君に寄り添いたい。(杜麗娘)叔母がおります。(柳夢梅)冥土の人は長き夜を君と共に過ごすに難しい。心は定まらず、なお君の旧い魂の散りゆくことを案じる。(杜麗娘)もう散りはしません。(柳夢梅)我が文章がどれほど優れていようとも、ひとたび揭榜の時、我は間に合って戻れぬことを恐れる。(杜麗娘泣く)我が父母よ!(柳夢梅)君は両親を想い、別れの情を惜しむ。我は半子の身、どうして高い地位を望むのを惜しもうか。小姐、我が岳父岳母に拝謁する時、口を開けばまず君の生き返った事を尋ねるだろう。
【漁家灯】(杜麗娘嘆く)言い出せば怪異妖邪の如く、我が父は頑固で古臭く、見せかけを好むのを恐れる。(考え込む)あった、我が春宮の絵を身に帯びなさい。彼がこの絵を見れば、必ずや我々の因縁を問うことでしょう。(柳夢梅)問われたら如何に答える?(杜麗娘)天曹の偶然に注がれた姻縁が至り、思いがけず墓穴を踏み開けたと言うのです。(柳夢梅)まず君が我が書斎に来たと言うべきだろう。(杜麗娘恥じる)見せかけは止めよ、その言葉は笑われる。あのいたずらな梅香にほんの少し聞かせるが良い。
【前腔】(柳夢梅)我は心から高車駟馬で君を迎え、この離魂の女と共に意気揚々とするのを望んでいた。誰が思おう、高き親を訪ねて戦場に赴くことになろうとは、この貧しき書生の衣装の乱れを恐れる。(杜麗娘)女婿は老成していても構いません。ただ道中の寂しさが、我が心を掛けさせます。(柳夢梅)秋の夜、雲に雁の字を横たえ、斜陽の古道、秦淮河に夜泊すれば、魂も消えんばかり。(杜麗娘)あなた、行く時は冷ややかでも、戻る時もし状元になったなら……(柳夢梅)名は天下に揚がり、大いに宴を張り、門前は市をなす如く、笑い声は驸馬の還朝にも勝る。(浄登場)「雨傘は晴れの日も雨の日も使い、春宮画は秋去り春来も同じ。」包みと雨傘はここにございます。
【尾声】(別れの挨拶)(杜麗娘)秀才が岳家の門を訪ねて行く。(柳夢梅)君の再生を報ずるこの喜びの声小さからじ。(杜麗娘)柳郎、あちらが平穏なら帰ってきて下さい、月明かりの橋の上で人の笛を聴くのに夢中にならないで。
(柳夢梅)長く岳父に拝謁せざるためにはあらず、劉商 (杜麗娘)嚢中に双親に献ずる物一つ無し。杜甫 (柳夢梅)馬の蹄は漸く揚州の路に入る、章孝標 (杜麗娘)両地それぞれ心傷みて神限り無し。元稹
