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三国演義

第三回 議温明董卓叱丁原 餽金珠李肅説呂布

第 3 篇

第三回 温明にて董卓、丁原を叱り、金珠を餽りて李肅、呂布を説く

且つ説く、曹操その日何進に謂いて曰く「宦官の為す禍害は、古より今に至るまで有り。ただ君主の、彼等に権力と寵信を与うべきではなく、此の境涯に至らしめたるのみ。若し其の罪を治めんと欲せば、首悪を除くべきのみ。一獄吏に委ぬるに足れり。何ぞ紛紛として外地の軍を召さんや。全部を殺尽さんと欲せば、事は必ず漏れん。我れ此の事は必ず敗るると料る」と。何進怒りて曰く「孟徳も亦た私心を懐くや」と。曹操退き出でて曰く「天下を乱らんとする者は、必ず何進なるのみ」と。何進、是に於いて陰に人をして密詔を懐きて、夜を徹して諸軍鎮に馳せしむ。

卻説前将軍斄郷侯西涼刺史董卓は、先に黄巾軍を攻めて功無く、朝廷其の罪を治めんと欲するも、彼十常侍に賄賂を以て幸い免るるを得たり。後に又た朝廷の顕貴に攀附し、遂に顕要の官職に任ぜられ、西州の大軍二十万を統べ、常に位を簒せんとの心を懐く。此の時詔書を受け、大いに喜び、軍馬を点じ、陸続として発進す。其の女婿中郎将牛輔をして陝西を守らしめ、自らは李傕・郭汜・張済・樊稠等を連れ、兵を提げて洛陽に向かいて発す。董卓の女婿にして謀士たる李儒曰く「今詔書を奉ずと雖も、中間に明白ならざる所多し。何ぞ人をして奏章を上せしめ、名正しく言順なれば、大事を図るべきなり」と。董卓大いに喜び、是に於いて表を上す。奏章の大意に曰く:

臣聞く、天下の叛乱止まざる所以は、皆黄門常侍張让等が天理を侮慢するが故なりと。臣聞く、沸湯を揚げて沸を止むるは、薪を抽くに如かず。毒瘡を刺すは痛しと雖も、毒患を養うに勝る。臣敢て鐘を鳴らし鼓を撃ちて洛陽に入り、張让等の除かるるを請う。国家幸いなり!天下幸いなり!

何進表を得て、出だして大臣に示す。侍御史鄭泰諌めて曰く「董卓は豺狼の如き人なり。若し彼を京師に引かば、必ず人を食わん」と。何進曰く「汝は疑い多きのみ。以て大事を謀るに足らず」と。盧植も亦た諌めて曰く「我一向董卓の為人を知る。表は善にして裏は狠なり。一たび宮廷に入らば、必ず禍患を生ぜん。来らざるを阻止するに如かず。以て禍乱を招かざらんことを」と。何進聴かず。鄭泰・盧植、皆官を棄てて去る。朝廷の大臣、去る者半ばを過ぐ。何進人をして渑池に至り董卓を迎えしむるも、董卓兵を按じて動かず。

張让等、外兵の到るを知り、共に議して曰く「是れ何進の計なり。我等若し先んじて手を下さずんば、皆族滅せられん」と。是に於いて先ず長楽宮嘉徳門内に五十名の刀斧手を伏せ、然る後進みて何太后に告げて曰く「今大将軍、偽詔を仮りて外兵を京師に召し、我等を滅ぼさんと欲す。願わくは娘娘、垂憐して救いを賜え」と。太后曰く「汝等、大将軍府に至りて罪を認む可し」と。張让曰く「若し相府に至らば、我等は即ち肉醤にせられん。願わくは娘娘、大将軍を宣召し入宮して之を勧止せよ。若し聴かずんば、我等は娘娘の前に於いて死を請わん」と。太后、是に於いて詔を下して何進を宣召す。何進詔書を受け、即ち動かんとす。主簿陳琳諌めて曰く「太后の此の詔書は、必ず十常侍の陰謀なり。千万に行く可からず。行かば必ず禍あらん」と。何進曰く「太后我を召す、何の禍か有らん」と。袁紹曰く「今計謀已に漏れ、事已に敗露す。将軍尚お宮に入らんと欲するか」と。曹操曰く「先ず十常侍を召し出だし、然る後に入る可し」と。何進笑いて曰く「是れ小児の見識なり。我天下の大権を掌握す。十常侍敢て我を如何とせん」と。袁紹曰く「公必ず行かんと欲せば、我等甲士を率いて護衛し、以て不測に備えん」と。是に於いて袁紹・曹操、各々精兵五百を選び、袁紹の弟袁術をして統領せしむ。袁術全身に披掛し、兵を領して青瑣門外に列陣す。袁紹と曹操、剣を帯びて何進を送り、長楽宮の前に至る。黄門官、太后の旨を伝えて曰く「太后特だ大将軍を召す。余人の擅りに入るを許さず」と。袁紹・曹操等を、皆宮門の外に擋てる。何進昂然として首を挺てて直ちに入る。嘉徳殿の門に至り、張让・段珪迎え出で、左右に囲む。何進大いに驚く。張让厲声に何進を責めて曰く「董后何の罪か有りて、汝敢て毒酒を以て之を害せしむるや。国母の喪葬に、汝亦た病気を借口として赴かず。汝本屠沽の小輩、我等天子に汝を薦め、以て汝をして栄華富貴を得せしむ。汝恩を報いずして、反って我等を謀害せんと欲す。汝我等を汚濁と言う。清白なる者は誰ぞ」と。何進驚慌急迫し、出路を尋ねんと欲すれども、宮門皆閉ざされ、伏兵一斉に出で、何進を両段に斬る。後に人ありて詩を作り嘆ず:

漢室傾危し天数終わる、謀無き何進三公と作る。数たび忠臣の諌めに聴かず、免れ難し宮中に剣鋒を受くるを。

張让等、何進を殺したる後、袁紹久しく何進の出で来たるを見ず、是に於いて宮門の外に大いに叫びて曰く「請う将軍車に上れ」と。張让等、何進の首級を牆上より擲ち出だし、宣告して曰く「何進謀反し、已に伏法して殺さる。其の余の脅迫せられたる者、皆赦免す」と。袁紹厉声に大いに叫びて曰く「宦官、大臣を謀殺す。悪党を誅せんと欲する者は来たりて戦を助けよ」と。何進の部将呉匡、便ち青瑣門の外に於いて火を放つ。袁術兵を領して宮廷に衝入し、凡そ宦官を見るに、大小を論ぜず、皆殺す。袁紹・曹操、関門を斬り開けて宮内に入る。趙忠・程曠・夏惲・郭勝の四人、翠花楼の前に追い詰められ、肉泥に剁せらる。宮中火焰天に冲す。張让・段珪・曹節・侯覧、太后及び太子并びに陳留王を劫持して内省に逃れ、後道より北宮に逃る。時に盧植、官を棄てて未だ去らず、宮中の変事を見、鎧を著け戈を執りて、閣下に立つ。遠く段珪の簇擁して何后を逼迫するを見、盧植大いに呼ばわって曰く「段珪の逆賊、敢て太后を劫持せんや」と。段珪身を回らして便ち走る。太后窓中より跳び出で、盧植急ぎ救いて幸いに免るるを得たり。呉匡内庭に殺し入り、何苗も亦た剣を提げて出で来たるを見る。呉匡大いに呼ばわって曰く「何苗、同謀して兄を害せしむ。共に之を殺すべきなり」と。衆皆曰く「願わくは此の兄を謀害するの賊子を斬らん」と。何苗逃れんと欲するも、四面に囲まれ、碎末に砍せらる。袁紹又た軍士に命じて分頭に十常侍の家族を殺さしむ。大小を論ぜず、皆殺絶す。多く鬚無き者を誤殺して死す。曹操一方宮中の火を救い滅し、何太后に請いて暫く大事を主掌せしめ、兵を派して張让等を追撃し、少帝を尋ね求む。

且説張譲、段珪は少帝と陳留王を脅し、煙と火の中を夜通し北邙山へ逃げた。およそ三更の頃、背後から喊声が大きくなり、人馬が追い迫ってきた。先頭に立つのは河南中部掾吏の閔貢で、大いに叫んだ。「逆賊、止まれ!」張譲は事の危急を見て、川に身を投げて死んだ。少帝と陳留王は虚実を知らず、声も高く上げられず、川辺の雑草の中に伏していた。軍馬は四方に散って追いかけ、皇帝の居場所を知る者はいなかった。少帝と陳留王は四更まで伏せていたが、露がまた降り、腹も減り、抱き合って泣いた。また人に気づかれるのを恐れ、草むらの中で声を殺して泣いた。陳留王が言った。「ここに長く留まることはできません。別に生きる道を求めねばなりません。」そこで二人は衣服を互いに結び合わせ、岸に這い上がった。地面は荆棘だらけで、暗闇の中、道が見えなかった。途方に暮れていると、突然、千百群れなす蛍が現れ、光を放ちながら、ただ皇帝の前を飛び回った。陳留王が言った。「これは天が我ら兄弟を助けるのだ!」そこで蛍火に従って進み、次第に道が見えるようになった。五更に至り、足が痛んで歩けなくなった。山の麓に草の山が見え、少帝と陳留王はその草の山のそばに伏した。草の山の前には一つの庄屋があった。庄主はその夜、二つの赤い日が庄の後に落ちる夢を見て、驚いて目覚め、衣を羽織って戸外に出、四方を見回した。庄の後の草の山に紅光が天を衝いているのを見て、慌てて見に行くと、二人の者が草のそばに伏していた。庄主が尋ねた。「二人の若者はどこの家の子か?」少帝は答えることができなかった。陳留王が少帝を指さして言った。「これが当今の皇帝で、十常侍の乱に遭い、ここに逃れて来られた。私は皇弟の陳留王である。」庄主は大いに驚き、拝みに拝んで言った。「私は先朝の司徒崔烈の弟、崔毅でございます。十常侍が官を売り、賢を妬むのを見て、ここに隠棲しておりました。」そこで少帝を庄に扶け入れ、跪いて酒食を進めた。

さて、閔貢は段珪に追い付き、これを捕らえて、天子がどこにいるのか尋ねた。段珪は半ばで行き違って、どこへ行ったか知らないと言った。閔貢はそこで段珪を斬り、その首を馬の首に掛け、兵を分けて四方を探させた。自身は一騎で道に沿って尋ねた。偶然、崔毅の庄に来合わせ、崔毅は首を見て、どういうことかと問い、閔貢は詳しい事情を話した。崔毅は閔貢を連れて少帝に謁見し、君臣は涙を流して泣いた。閔貢が言った。「国には一日たりとも主君なくしてはなりませぬ。どうか陛下、京に還らせ給え。」崔毅の庄には痩せ馬が一頭あるだけで、鞍を置いて少帝に騎乗させた。閔貢は陳留王と一頭の馬に共に乗った。庄を離れて三里も行かないうちに、司徒王允、太尉楊彪、左军校尉淳于瓊、右军校尉趙萌、後军校尉鮑信、中军校尉袁紹、一行の衆、数百の馬が、車駕に迎え、君臣皆泣いた。先に人を遣わして段珪の首を京師に送り、衆に示した。別に良い馬を少帝と陳留王に騎乗させ替え、皇帝を擁して京に帰った。先に洛陽に童謡があった。「帝は帝にあらず、王は王にあらず、千乗万騎、北邙を行く。」この時、果たしてこの讖が応じた。

車駕が数里も行かないうちに、忽然として旌旗が天を蔽い日を覆い、塵埃が舞い上がり、一軍がやって来た。百官は皆、顔色を変えて震え上がり、皇帝も大いに驚かれた。袁紹は馬を駆けて進み、何者かと大喝した。繍旗の影の中から、一将が馬を飛ばして出で、声を厲して問うた。「天子はどこにおわすか?」皇帝は震え上がって言葉も出なかった。陳留王は馬を止めて進み出で、呵して言った。「来たる者は何者か?」董卓が言った。「我は西涼刺史董卓である。」陳留王が言った。「汝は駕を護りに来たのか、それとも駕を劫ちに来たのか?」董卓が答えた。「特に駕を護りに来たのである。」陳留王が言った。「既に駕を護りに来たのなら、天子はここにおわす。なぜ下馬せぬ?」董卓は大いに驚き、慌てて馬を下り、路傍に跪拝した。陳留王は言葉をもって董卓を安撫慰問し、終始、一言も言い誤ることがなかった。董卓は密かに彼を奇特と思い、心の中に既に廃立の念が生じていた。その日、宮中に帰り、何太后に謁見し、それぞれ涙を流して泣いた。宮中の物品を点検すると、伝国の玉璽が失われていた。董卓は軍を城外に駐屯させ、毎日、鉄甲の馬軍を率いて城に入り、街市を横行し、百姓は惶怖不安であった。董卓は宮廷に出入りし、何の憚りもなかった。その後、後军校尉鮑信が袁紹のもとに来て、董卓は必ず異心を抱いている、速やかに除くべきだと言った。袁紹が言った。「朝廷はようやく安定したばかりで、軽々しく動くことはできぬ。」鮑信はまた王允のもとに行き、同じことを言った。王允が言った。「暫く我に議するのを容れよ。」鮑信はそこで自ら本軍を率いて、泰山へと赴いた。

董卓は何進・何苗兄弟の部下の兵を招降誘引し、全て自分の掌握に収めた。密かに李儒に言った。「朕は帝を廃し、陳留王を立てようと思うが、如何か?」李儒が言った。「今、朝廷に主心骨なく、この時に乗じなければ、延引すれば変が生じましょう。明日、温明園の中に、百官を集め、廃立の事を宣布なさい。従わざる者は之を誅すれば、威勢と権力は行われ、今日の内に事は成りましょう。」董卓は喜んだ。翌日、大いに筵席を設け、公卿大臣を遍く招いた。公卿たちは皆、董卓を恐れ、誰が敢えて至らぬことがあろうか?董卓は百官が皆到着してから、ようやくゆっくりと園門の下に馬を下り、剣を帯びて席に入った。酒が数巡過ぎ、董卓は酒宴と音楽を止めさせ、そこで声を厲して言った。「我に一言あり、衆官は静かに聴け。」衆官は耳を傾けた。董卓が言った。「天子は万民の主なり。威儀なくんば、宗廟社稷を奉るに足らぬ。今、上皇は懦弱にして、陳留王の聰明にして学を好むに如かず、大位を継ぐに足る。朕は帝を廃し、陳留王を立てんと欲す。諸大臣は如何と思うか?」衆官は聞き終え、皆声も出せなかった。座中に一人、卓を押しのけて直ちに立ち上がり、筵席の前に立ち、大いに叫んだ。「ならぬ!ならぬ!汝は何者ぞ、よくも大言を吐いたな!天子は先帝の嫡子、もとより過ちなし。どうして廃立を妄りに議するのか?汝は位を簒し、反逆を謀ろうとするのか?」董卓が見ると、荆州刺史の丁原であった。董卓は大いに怒り、呵して言った。「我に従う者は生き、我に逆らう者は死す!」そこで佩剣を抜き、丁原を斬らんとした。この時、李儒は丁原の背後に一人の者を見た。生まれつき器宇軒昂、威風凛凛として、方天画戟を手に持ち、怒りを目に宿していた。李儒は急いで進み出で言った。「今日は酒を飲み筵を設ける所、国政を論ずべき場にあらず。明日、朝堂に於いて公論するも遅くはあるまい。」衆人も皆、丁原を諭して馬に乗り去らせた。

董卓は百官に問うた。「我が言うところ、公道に適うか?」盧植が言った。「明公は誤っておられる。昔、太甲は理に暗く、伊尹はこれを桐宮に流した。昌邑王は位に登って僅か二十七日、三千余条の悪事を為した。故に霍光は太廟に祭告してこれを廃した。今、上皇は幼いながらも、聡明仁愛智にして、絲毫の過ちもない。明公はただ外郡の刺史、向来国政に与ったことなく、又伊尹・霍光の如き大才もない。どうして強いて廃立の事を主張するのか?聖人は『伊尹の志あれば可なり、伊尹の志なければ簒なり』と言う。」董卓は大いに怒り、剣を抜いて前に進み、盧植を斬らんとした。議郎彭伯が諫めて言った。「盧尚書は天下の人望を負う者。今、先ずこれを害せば、恐らく天下の人は震え恐れましょう。」董卓はようやく手を止めた。司徒王允が言った。「廃立の事は、酒の後に議すべきにあらず。改めて議するが良かろう。」ここに百官は皆散った。

董卓は剣を押さえて園門に立っていたが、突然一人の者が戟を挺て馬を躍らせ、園門の外を行ったり来たり駆け回るのを見た。董卓が李儒に問うた。「これは何者だ?」李儒が言う。「これは丁原の義子で、姓は呂、名は布、字は奉先と申します。主公はひとまずお避けください。」董卓はそこで園に入り、こっそりと身を隠した。

翌日、ある者が報告して、丁原が軍を率いて城外で挑戦していると告げた。董卓は大いに怒り、軍を率いて李儒と共に城を出て迎え撃った。両軍が対陣すると、吕布は頭に束発金冠を戴き、身には百花戦袍をまとい、唐猊の鎧を着け、獅蛮宝帯を締め、馬を駆り戟を挺て、丁原に従って陣前に現れた。丁原は董卓を指さして罵った。「国家は不幸にも、宦官が権を弄し、万民を塗炭の苦しみに陥れた。そなたには一片の功績もないのに、よくも妄言を弄して皇帝を廃立しようとし、朝廷を乱すとは!」董卓がまだ答え終わらぬうちに、吕布は飛ぶように馬を駆って真っ直ぐに斬り込んできた。董卓は慌てて逃げ、丁原は軍を率いて追撃した。董卓の軍は大敗し、三十余里後退して営寨を設け、人々を集めて協議した。董卓が言う。「我が見るに、吕布は並々ならぬ者だ。我がもしこの者を得ることができれば、天下を憂うことがあろうか?」帳前に一人の者が進み出て言う。「主公はご心配には及びません。私は吕布と同郷で、彼が勇猛だが謀略に乏しく、利を見て義を忘れることを知っています。私はこの三寸の舌をもって、吕布を説得して拱手して降らせることができますが、いかがでしょうか?」董卓は大いに喜び、その者を見ると、虎賁中郎将の李肅であった。董卓が言う。「あなたは何をもって彼を説得しようとするのか?」李肅が言う。「私は主公に一頭の名馬があると聞いております。名を『赤兔』といい、一日に千里を行くことができます。必ずこの馬を得て、さらに金銀珠宝を用い、利をもってその心を動かさねばなりません。私がさらに進んで説得すれば、吕布は必ずや丁原を裏切り、主公のもとに来るでありましょう。」董卓は李儒に問う。「この言葉は実行できるか?」李儒が言う。「主公が天下を取ろうとなさるのに、どうして一頭の馬を惜しむことがありましょうか?」董卓は欣欣然として馬を与え、さらに黄金千両、明珠数十顆、玉帯一条を添えた。

李肅は礼物を携えて、吕布の営寨に向かった。伏せていた軍士が彼を取り囲んだ。李肅が言う。「急ぎ呂将軍に報じよ、旧友が来て会いたいと。」軍士が報告すると、吕布は彼を招き入れて会うよう命じた。李肅は吕布に会って言う。「賢弟、お別れして以来、お変わりありませんか!」吕布が拱手して言う。「久しくお目にかかりませんでしたが、今はどこにお勤めですか?」李肅が言う。「現在、虎賁中郎将の職にあります。賢弟が社稷を匡扶していると聞き、大いに喜んでおります。私は一頭の良馬を持っており、一日に千里を行き、水を渡り山に登ること、平地を行くが如し、名を『赤兔』と申します。特別に賢弟に献上し、あなたの虎威を助けようと思います。」吕布はそこで人を呼んで馬を引き出させて見た。果たしてこの馬は全身、火の炭のように赤く、半本の雑毛もなかった。頭から尾まで、長さ一丈。蹄から頸まで、高さ八尺。嘶き咆哮する様は、天に昇り海に入るかのような勢いがあった。後に人が詩を作ってこの赤兔馬を評して言う。

奔騰千里蕩塵埃、渡水登山紫霧開。

掣斷絲韁搖玉轡、火龍飛下九天來。

吕布はこの馬を見て、大いに喜び、李肅に感謝して言う。「兄がこの良駒を私に賜ったならば、私は何をもって報いるべきでしょうか?」李肅が言う。「私は義気のために来たのであって、どうして報いを望みましょうか?」吕布は酒を設けて彼をもてなした。酒が酣になるに及び、李肅が言う。「私は賢弟とめったに会いませんが、令尊は常に私と会っておられます。」吕布が言う。「兄は酔っておられます!先父は亡くなって久しいのに、どうして兄と会うことがありましょうか?」李肅は大笑して言う。「そうではありません。私が今日言うのは、丁刺史のことです。」吕布は惶恐して言う。「私は丁原のもとにおりますが、これもやむを得ないことです。」李肅が言う。「賢弟には擎天駕海の才能があり、天下の誰が敬服しないでしょうか?功名富貴は、探囊取物の如し、どうしてやむを得ずして人に屈するなどと言うのですか?」吕布が言う。「ただ明主に遇わぬことを恨むのみです。」李肅は笑って言う。「『良禽は木を選んで棲み、賢臣は主を選んで仕える。』早く時機を見極めなければ、後悔しても遅いでしょう。」吕布が言う。「兄は朝廷におられて、誰が当世の英雄とお考えですか?」李肅が言う。「私は広く群臣を見渡しましたが、皆董卓には及びません。董卓の人物は賢士を敬い、礼をもって人材を遇し、賞罰は明らかで、ついには大業を成就するでしょう。」吕布が言う。「私は彼に従いたいと望みますが、ただ手がかりがないのを恨みます。」李肅は金珠と玉帯を取り出して吕布の前に並べた。吕布は驚いて言う。「なぜこれらのものがあるのですか?」李肅は左右の者を退け、吕布に告げて言う。「これは董公が久しくあなたの高名を慕い、特別に私に命じてこれらをあなたに献上させたものです。赤兔馬もまた董公が贈られたものです。」吕布が言う。「董公がこのように厚く遇してくださるなら、私は何をもって彼に報いるべきでしょうか?」李肅が言う。「私のような才能のない者でさえ、なお虎賁中郎将をしております。あなたが彼のもとに行けば、富貴は計り知れません。」吕布が言う。「ただ微細な功績もなく、進見の礼物とすることを恨みます。」李肅が言う。「功績は翻手の間にあり、ただあなたがなされようとしないだけです。」吕布はしばらく沈吟して言う。「私は丁原を殺し、軍を率いて董卓に帰順しようと思いますが、いかがでしょうか?」李肅が言う。「賢弟がもしこのようにできるならば、これこそ大いなる功績です!しかし事は引き延ばすべからず、速決にあるのみです。」吕布は李肅と約束して、明日投降するとし、李肅は別れて去った。

その夜、二更の頃、吕布は刀を提げて真っ直ぐに丁原の営帳に入った。丁原はちょうど蝋燭を灯して書を読んでいたが、吕布が来るのを見て問うた。「我が子よ、ここに来て何事か?」吕布が言う。「私は堂堂たる男子、どうしてあなたの子などになろうか!」丁原が言う。「奉先よ、どうして突然心変わりしたのか?」吕布は進み出て一刀のもとに丁原の首を斬り落とし、大声で叫んだ。「左右よく聞け!丁原は不仁不義、私はすでに彼を殺した。我に従いたい者は留まれ、従いたくない者は勝手に去れ!」軍士の大半は散り去った。翌日、吕布は丁原の首級を提げて李肅に会いに行った。李肅はすぐに吕布を連れて董卓に会わせた。董卓は大いに喜び、酒を設けてもてなした。董卓は先ず下拝して言う。「董卓、今日将軍を得ることは、旱の苗が甘雨を得るが如し。」吕布は董卓を座らせ、そして彼に跪拝して言う。「あなたがお嫌いでなければ、吕布はあなたを義父と拝することを願います。」董卓は金甲錦袍を吕布に賜り、暢飲してから散会した。董卓はこれより威勢ますます盛んになり、自ら前将軍の職を兼ね、弟の董旻を左将軍、鄠侯に封じ、吕布を騎都尉、中郎将、都亭侯に封じた。

李儒は董卓に早く廃立の計を定めるよう勧めた。董卓はそこで朝中に宴を設け、公卿大臣を召集し、吕布に命じて甲士千余人を率い、左右に侍衛させた。この日、太傅の袁隗と百官が皆到着した。酒が数巡を過ぎた頃、董卓は剣を抜いて言う。「当今の皇帝は昏庸懦弱で、宗廟を供奉することができない。私は伊尹、霍光の旧例に従い、皇帝を廃して弘農王とし、改めて陳留王を帝と立てる。敢えて従わぬ者は、斬り捨てる!」群臣は惶恐して、敢えて答える者はいなかった。中軍校尉の袁紹が挺身して言う。「当今の皇帝は即位して間もなく、未だ失徳の点はない。あなたは嫡子を廃して庶子を立てようとする、これは造反に他ならぬ!」董卓は大いに怒って言う。「天下の事は我が意のままに動く!我が今日これを行う、誰か敢えて従わぬ者がいるか?我が剣の鋒が足りぬと見えるか?」袁紹も剣を抜いて言う。「あなたの剣が鋒利でも、我が剣もまた利かぬとは限らぬ!」二人は筵席の上で対峙した。正に、

丁原仗義身先喪、袁紹争鋒勢又危。

はたして袁紹の命は如何に、且つ下回の分解を聴け。