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周書

洪範

第 32 篇

周の武王は商の紂王に勝利し、紂王(受)を殺した。紂王の子である武庚を(諸侯として)立てた。箕子を連れて周の朝廷に帰った。そこで(箕子が)『洪範』を作った。(原書にはこの段はない)

(文王が天命を受けた後の)第十三年。武王が箕子を訪ねた。

武王はそこでこう言った。「ああ!箕子よ。上天は黙って下界の民を安定させ、彼らが和やかに暮らすのを助ける。私はその(天下を治める)常理が(一体どのように)整えられるのか知らない。」

箕子はそこでこう言った。「私は昔、鯀が(塞ぐ方法で)洪水を塞ぎ、(水・火・木・金・土の)五行の秩序を乱したと聞いています。天帝はそこで大いに怒り、(天下を治める)大法九類を彼に授けませんでした。その常理は(そのために)損なわれました。鯀はそこで流刑にされて死にました。禹はそこで(大業を継いで)興りました。上天は大法九類を禹に授けました。その常理は(そのために)秩序立てられました。)

第一を五行と言う。第二を五つの事を恭敬に行うことと言う。第三を八種の政務を努力して行うことと言う。第四を五つの時を数える方法を調和して用いることと言う。第五を(人君が持つべき)最高の基準を立てることと言う。第六を(三つの徳行をもって)(国を)治めることと言う。第七を(疑問を調べる方法を用いて)明らかにすることと言う。第八を(様々な)兆候を(よく)考えることと言う。第九を(五つの幸福をもって臣民を励まし)、(六つの困難をもって臣民を戒めること)と言う。

一、五行。第一は水である。第二は火である。第三は木である。第四は金である。第五は土である。水は下に潤す。火は上に燃え上がる。木は(曲げたり伸ばしたりできる)。金は(人の意に従って)(形を)変えることができる。土は(植物を)植えたり収穫したりできる。(下に潤す)水の(味は)鹹くなる。(上に燃え上がる)火の(味は)苦くなる。(曲げ伸ばしできる)木の(味は)酸っぱくなる。(人の意に従って変わる)金の(味は)辛くなる。(植え収穫する)土の(味は)甘くなる。

二、五つの事。第一は(儀)貌である。第二は(言)語である。第三は(見)ることである。第四は(聞)くことである。第五は(思)うことである。(儀)貌は恭敬でなければならない。(言)語は(道理に)従わなければならない。(見ることは)明らかでなければならない。(聞くことは)はっきりと(聞き取れ)なければならない。(思うことは)事理に通じていなければならない。(儀)貌が恭敬であれば(厳かに)振る舞える。(言)語が従えば(秩序立って)治められる。(見ることが)明らかであれば(物事を)見分けられる。(聞くことが)はっきりしていれば(計画を)立てられる。(思うことが)事理に通じていれば(聖明に)なれる。

三、八種の政務。第一は(食糧の生産を)掌ること。第二は(財貨の流通を)掌ること。第三は(祭祀を)掌ること。第四は(土木建設の)司空を掌ること。第五は(教育の)司徒を掌ること。第六は(司法の)司寇を掌ること。第七は(礼儀の)賓を掌ること。第八は(軍事の)師を掌ること。

四、五つの時を数える方法。第一は(年)歳である。第二は(月)月である。第三は(日)日である。第四は(星辰の運行を)観察することである。第五は(暦法・節気の)数を推算することである。

五、君主の最高の基準。君主は(自らの)最高の基準を立てるべきである。(その)五つの幸福を集めて、広く多くの民に与えるべきである。そうすれば、多くの民は(あなたの基準に)賛同し、(また)あなたに(この)基準を保つ方法を授けるであろう。

およそ多くの民で、(互いに結託する)邪悪な党派はない。人々に(互いに寄り集まる)私的な徳はない。ただ(君主の基準を)最高の基準とするのみである。

およそ多くの民で、(もし)謀略があり、行動があり、節操があるならば、あなたは(常に)彼らを顧みるべきである。(もし彼らの行動があなたの)基準に合わなくても、(しかし)罪恶に陥らなければ、君主は(彼らを)寛容に受け入れるべきである。(そして)和やかな顔つきで(彼らに)言うべきである。「私は美徳を好む者である。」と。そうすればあなたは彼らに幸福(すなわち禄位)を授ける。こうして、これらの人々は(君主の基準を守ることを)思うようになるであろう。

(孤独で寄る辺なく、また)身分の低い人々を虐待してはならない。(また)地位の高い人々を恐れてはならない。

(もし)人々の中に才能があり、行動力のある(者が)いるならば、(彼らに)その才徳を発揮させるべきである。そうすれば国は(繁栄する)。およそ(在位の)官員は、(すでに)富んでいるならば、善道をもって(彼らに)臨むべきである。もしあなたが彼らに(あなたの)国にとって(有益なことをさせることが)できなければ、これらの人々は罪を犯すであろう。(もし)徳のない者に対して、あなたが幸福(禄位)を授けても、(それは)あなたを彼らの(禍いで)苦しめることになるであろう。

偏りがなく、不平がなければ、(先)王の(正しい)道理に従うべきである。(個人的な)好みがなければ、(先)王の(正しい)道に従うべきである。(個人的な)憎しみがなければ、(先)王の(正しい)道筋に従うべきである。偏りがなく、党派がなければ、(先)王の(治める道は)広く平らかである。党派がなく、偏りがなければ、(先)王の(治める道は)平らかで広い。背かず、偏らなければ、(先)王の(治める道は)正しく公平である。(人々を)この基準に集め、(人々を)この基準に帰するべきである。

(上に)言う。君主が(最高の基準を立てることについての)この陳述は、常道であり、訓戒であり、(天の)教えに従うものである。

およそ多くの民は、(基準の)この陳述に従い、これを実行して、天子の光輝に親しむべきである。(こう)言うべきである。「天子は民の父母であり、それゆえに天下の君主となられるのだ。」と。

六、三つの徳行。第一は(中正で)正直であること。第二は(剛をもって)勝つこと。第三は(柔をもって)勝つこと。(平らかな)者には(中正で)正直を用いる。(強硬で親しみにくい)者には剛(強)をもって勝つ。(和順で親しみやすい)者には柔(和)をもって勝つ。(深く隠れ潜む奸邪)には剛(強)をもって勝つ。(高明な者)には柔(和)をもって勝つ。

ただ(君)主だけが福を施す(すなわち賞を与える)ことができる。ただ(君)主だけが威を示す(すなわち罰を与える)ことができる。ただ(君)主だけが美食を享受することができる。(臣下として)、福を施し、威を示し、美食を享受する(権限は)ない。

(もし)臣下が(権限を持って)福を施し、威を示し、美食を享受するならば、それは(あなたの)家族を害し、(あなたの)国を禍にする。こうなれば、人々は(行いが)偏り不正になり、民は(行いが)法を越えて乱れるであろう。

七、疑問を調べる方法。占卜と占筮を掌る官員を選び、設ける。そこで(彼らに)占卜と占筮を行うよう命じる。

(亀卜の兆の)形には、(雨が降る様子)、(雨上がりの晴れ間の様子)、(霧が立ちこめる様子)、(雲気が絶え間なく連なる様子)、(陰陽が交わり克つ様子)がある。

(卦象の)内卦を貞と言う。外卦を悔と言う。

(卜筮の兆象は)全部で七つある。亀卜に(用いる兆象は)五つある。占筮に(用いる卦象は)二つある。(これらの兆象に基づいて)推し変えて(吉凶を)判定する。

これらの官員を設けて卜筮を行う。(もし)三人が(同時に)占うならば、(そのうちの)二人の(同じ)意見に従うべきである。

(もし)君に重大な疑問があれば、(まず)自らの心の中で(繰り返し)考え、(次に)卿士たちと(共に)謀り、(さらに)多くの民衆と(共に)謀り、(最後に)卜筮(の結果)と照らし合わせる。(もし)君(自身)が同意し、亀卜(の結果)が同意し、占筮(の結果)が同意し、卿士(たち)が同意し、民衆(たち)が同意するならば。これを(完全なる)一致という。(そうすれば、君の)身体は(健康で)強壮となり、(君及び)子孫も(またそれにより)吉に逢う。もし君(自身)が同意し、亀卜(の結果)が同意し、占筮(の結果)が同意し、卿士(たち)が反対し、民衆(たち)が反対するならば、(これを行うのは)吉である。もし卿士(たち)が同意し、亀卜(の結果)が同意し、占筮(の結果)が同意し、君(自身)が反対し、民衆(たち)が反対するならば、(これを行うのは)吉である。もし民衆(たち)が同意し、亀卜(の結果)が同意し、占筮(の結果)が同意し、君(自身)が反対し、卿士(たち)が反対するならば、(これを行うのは)吉である。もし君(自身)が同意し、亀卜(の結果)が同意し、占筮(の結果)が反対し、卿士(たち)が反対し、民衆(たち)が反対するならば、(国内で)事を行うのは吉であり、(国外で)事を行うのは凶である。もし亀卜と占筮(の結果)が共に人の意に背くならば、動かざるのは吉であり、動きあれば凶である。

八、諸々の兆候。(上天が示す兆候)には、雨がある。晴れがある。暖かさがある。寒さがある。風がある。もしこれら五つの(現象)が全て備わり、かつそれぞれ(正常な)時節に従って(起こる)ならば、諸々の草木は(盛んに)茂る。

もし(或る一つの現象が)過多であれば、(それは)凶兆である。もし(或る一つの現象が)完全に欠如すれば、(それも)凶兆である。

(属する)吉兆:(君主の行為が)恭しければ、(時節にかなった適量の)雨水が(応じて)ある。(君主の行為が)条理があれば、(時節にかなった適量の)晴天が(応じて)ある。(君主が)明智であれば、(時節にかなった適量の)暖かさが(応じて)ある。(君主が)謀りに優れれば、(時節にかなった適量の)寒さが(応じて)ある。(君主が)聖明であれば、(時節にかなった適量の)風が(応じて)ある。(属する)災禍の兆候:(君主の行為が)狂妄であれば、絶え間ない雨水が(応じて)ある。(君主の行為が)僭越であれば、絶え間ない晴天が(応じて)ある。(君主の行為が)安逸放縦であれば、絶え間ない暖かさが(応じて)ある。(君主の行為が)急躁であれば、絶え間ない寒さが(応じて)ある。(君主の行為が)蒙昧昏暗であれば、絶え間ない風が(応じて)ある。

(応験の兆候を考察するに)言う:君主(の過失)は(一年の)天候によって省察すべきである。卿士(の過失)は(一月の)天候によって省察すべきである。師尹(諸官の過失)は(一日の)天候によって省察すべきである。

(もし)年、月、日、時の(正常な現象)に変わりがなければ、諸々の穀物は(それにより)成熟する。(国家の)政治は(それにより)清明となる。(才徳ある)優秀な人材は(それにより)顕揚される。(国家の)家室は(それにより)平安康寧となる。(もし)日、月、年、時の(正常な現象)が変われば、諸々の穀物は(それにより)成熟しない。(国家の)政治は(それにより)昏暗不明となる。(才徳ある)優秀な人材は(それにより)隠没する。(国家の)家室は(それにより)安寧を得られない。

多くの民衆(の徳行)は(天の)星宿に譬えられる。(ある)星は風を好み、(ある)星は雨を好む。太陽と月の運行は、(地上に)冬と夏をもたらす。月が(或る)星宿(の位置)に従えば、(地上には)風と雨が生じる。

九、五つの幸福。第一は長寿。第二は富裕。第三は健康安寧。第四は(美徳を)好むこと。第五は(自らの)命を(全うして)善終すること。

六つの困厄。第一は(遭遇する)凶険、短命、夭折。第二は疾病。第三は憂愁。第四は貧窮。第五は(道徳的な)醜悪。第六は(身体の)衰弱。