第十一回 朱貴水亭施号箭 林沖雪夜上梁山
第十一回 朱貴、水亭にて號箭を施し 林冲、雪夜に梁山に上る
さて「豹子頭」林冲はその夜、雪の中に醉い倒れて立ち上がれず、多くの莊客らが近づいて縛り上げ、ある莊園へと押し送った。そこへ一人の莊客が莊內から出て來て言うには「大官人はまだ起きておられぬ。先ずこいつを門樓の下に高く吊るしておけ。」と。空が明るくなりかけた頃、林冲は酒が醒め、目を開けて見ると、確かに大きな莊園であった。林冲は大聲で叫んだ「何者だ、俺をここに吊るすとは!」その莊客は叫び聲を聞きつけ、白木の棒を手に門の中から出て來て、喝した「この野郎、まだ強がりを言うか!」あの鬚を燒かれた老莊客が言うには「問い詰めるな、ただ打ち據けろ!大官人が起きられたら、事情を聞いて役所へ突き出すのだ。」莊客どもが一斉に寄って來て、林冲は打たれ、掙扎くことも出來ず、ただ叫んだ「俺を打つな、言いたいことがある。」すると一人の莊客が來て叫んだ「大官人がお出でだ。」林冲が見ると、一人の官人が手を背負って出て來て、廊下に至り問うた「お前たち、ここで誰を打っているのだ。」眾莊客が答えた「昨夜、米を盜んだ賊を捕まえたのです。」その官人が近づいて見ると、林冲と知り、慌てて莊客どもを叱り退け、自ら縄を解いて問うた「教頭、なぜここに吊るされているのだ。」眾莊客はこれを見て、一斉に立ち去った。
林冲が見ると、他ならぬ「小旋風」柴進であった。急いで叫んだ「大官人、お救い下され!」柴進が言う「教頭、どうしてここへ來られ、村人に辱めを受けたのです。」林冲が言う「一言では言い盡くせませぬ!」二人はひとまず中に入り腰を下ろし、草料場の火災の一件を詳しく語った。柴進は聽き終えて言う「兄貴は何と運のないことか!今日は天が良い機會を與えた。どうかご安心を。ここは小弟の東莊です。暫くここに留まり、相談しましょう。」莊客に命じて衣服の一揃いを持って來させ、林冲に內から外まで全て著替えさせた。暖閣に招き入れて腰を下ろさせ、酒食や杯盤を用意してもてなした。以來、林冲は柴進の東莊に五、七日留まったが、それはさておき。
さて滄州の牢城營の管營が申し立てた。林冲が差撥、陸虞候、富安の三人を殺し、放火して大軍の草料場を燒き盡くしたと。州尹は大いに驚き、すぐに公文を下し、捕り方の役人に命じて公差を率いさせ、村から村へ、街道や宿場、村々に至るまで、至る所に張り紙をさせ、三千貫の賞金を懸けて、正犯の林冲を捕らえさせた。搜捕は非常に厳しく、各所の村々に知れ渡った。
さて林冲は柴大官人の東莊にいて、この緊急の知らせを聞き、柴進が莊に歸るのを待って、林冲は言った「大官人が私を留めて下さらないわけではありませぬ。ただ官の追及が非常に厳しく、家々を搜しておりまして、もし大官人の莊にまで及んだなら、大官人にご迷惑がかかることを恐れます。大官人が義俠心で財を惜しまれないことを承知の上で、林冲に少しばかりの旅費をお借りいただき、他へ身を寄せる所を求め、後日もし死なずに済んだなら、犬馬の勞を盡くす所存です。」柴進が言う「兄貴がどうしてもお出でになるなら、私に一つの行き先がございます。書狀を一通したためて兄貴にお渡ししましょう。」正に、
豪傑は蹉跌して運未だ通ぜず、
行藏は隨所に牢籠せらる。
柴進の書を修めて薦むるにあらずんば、
焉んぞ名を水滸に馳するを得ん。
林冲は言う「大官人がこれほどまでに取り計らって下さるなら、私も身を安んじ命を立つることが出來ます。ただ何處へ參ればよいのでしょうか。」柴進が言う「山東の濟州の管轄にある水鄕で、地名を梁山泊と申します。方円八百里余り、中には宛子城、蓼兒洼がございます。今、三人の好漢がそこに寨を築いております。頭領は『白衣秀士』王倫と申し、次は摸着天杜遷、三番目は雲裡金剛宋万と申します。その三人の好漢は、七八百人の小﨟﨟を集め、家を襲い略奪をしております。多くは大罪を犯した者で、皆そこへ逃げ込み災いを避け、彼らは皆を受け入れております。三人の好漢は、私とも親交が厚く、しばしば書狀を寄越します。今、私が書狀をしたためて兄貴にお渡ししますので、そこへ行き仲間に入れて貰うのは如何でしょうか。」林冲が言う「そのようなご配慮を賜れましたら、この上もございませぬ!」柴進が言う「ただ滄州の道には、今、官府がお觸れ書きを張り出し、二人の役人を遣わして搜査させ、道を固めております。兄貴は必ずそこを通らねばなりませぬ。」柴進はうつむいて考え込んだ後、言った「もう一つ計がございます。兄貴をあそこを通り拔けさせましょう。」林冲が言う「お計らいを賜りましたら、死しても忘れませぬ。」
柴進はその日、先ず莊客に包みを背負わせて關の外で待たせた。柴進は三、二十頭の馬を用意し、弓矢や旗槍を持たせ、鷹や雕を放ち、猟犬を連れ、一行の馬は皆、裝いを整え、林冲をその中に紛れ込ませ、一斉に馬に乘って關の外へ向かった。さて關を守る役人は關の上に座っていて、柴大官人と見て、皆が知っていた。元來この役人は官職に就く前、柴進の莊に來たことがあり、それで顏見知りだったのである。役人は立ち上がって言った「大官人、またお樂しみに!」柴進は馬を下りて問うた「お二人はなぜここに?」役人が言う「滄州の太尹が文書を出し、似顏繪を描き、犯人林冲を捕らえるよう、特に我等をここに遣わして守らせております。行き來する客商があれば、一人一人問い質し、それから關を通すのです。」柴進は笑って言った「私のこの一隊の中に、林冲を紛れ込ませているが、どうしてお前は氣づかぬのだ?」役人も笑って言った「大官人は法をわきまえたお方です。まさか紛れ込ませてお出でになるはずがありましょうか?どうぞお好きなようになさって下さい。」柴進はまた笑って言った「それだけ信頼してくれるなら、獲物を手に入れたらお裾分けを屆けよう。」別れを告げ、一斉に馬に乘って關を出て行った。
十數里行くと、先に行った莊客がそこで待っていた。柴進は林冲に馬を下りさせ、狩りの服を脫がせ、莊客が持って來た自分の服を著せ、腰刀を佩かせ、赤い房のついた氈の笠を被らせ、包みを背負わせ、衮刀を持たせ、柴進に別れを告げ、拜してから出立した。柴進の一行は馬に乘り、自ら狩りに出かけ、晩になってから戻り、相變わらず關を通る際に役人に獲物を屆け、莊へと歸っていった。それはさておき。
さて林冲は柴大官人と別れた後、道を十數日行き、時は暮冬の天氣、暗い雲がびっしりと垂れ込み、北風が強く吹き始め、またひらひらと、滿天に大雪が降り積もった。二十里余りも行かぬうちに、地面は一面銀のようであった。昔、金の完顏亮が一篇の詞を作り、百字令と名付け、ただこの大雪を題として、胸中の殺氣を壯んにした。
天丁震怒し、
銀海を覆し、
珠簾を散亂す。
六出の奇花滾滾と飛び、
山中の丘壑を平らに埋む。
皓虎は顛狂し、
素麟は猖獗として、
珍珠の索を引き斷つ。
玉龍は酣に戰ひ、
鱗甲は滿天に飄落す。
誰か念ふ、萬里の關山、
征夫は僵立し、
縞帶は旗脚に沾ふ。
色は戈矛に映じ、
光は劍戟に搖れ、
殺氣は戎幕に橫たはる。
貔虎は豪雄、
偏裨は英勇、
共に兵略を談ず。
須く一醉を拚ふべし、
看よ碧空の寥廓を。
さて林冲は雪を踏みしめながらひたすら步き、空の寒さがひときわ厳しく、次第に暮れていった。遠くに見えるのは、溪に寄り添い湖に倚りかかった一軒の酒屋で、雪が漫漫と降り積もっていた。見れば、
銀は草の舍を迷はせ、
玉は茅の簷に映ゆ。
數十株の老樹は杈枒とし、
三、五處の小窓は閉ざされたり。
疎き荆の籬落は、
あたかも膩粉を輕く鋪きたるが如く、
黃土の繞らす牆は、
却って鉛華を布きたるに似たり。
千團の柳絮は簾幕に飄ひ、
萬片の鵝毛は酒旗に舞ふ。
林冲はそれを見ると、その酒店に駆け込み、葦簾をめくり上げて、身を横にして入った。振り返って見ると、どこもかしこも座席だった。一つの場所を選んで腰を下ろし、巻き刀を立てかけ、包みを解き、毛氈の笠を脱ぎ、腰刀も掛けた。すると、一人の酒保が来て尋ねた。「お客様、お酒はどれほどお召し上がりになりますか?」林冲が言う。「まずは酒を二角(※当時の単位)持って来い。」酒保は桶を持ってきて二角の酒を汲み、机の上に置いた。林冲がまた尋ねる。「何か酒の肴はあるか?」酒保が言う。「生の牛肉と煮込み牛肉、肥えた鵞鳥、柔らかい鶏がございます。」林冲が言う。「まずは煮込み牛肉を二斤切って来い。」酒保は行って間もなく戻り、大皿一杯の牛肉と数皿の野菜を並べ、大きな碗を置いて、酒を注ぎ始めた。林冲が三四碗の酒を飲んだところで、店の中で一人の男が手を背中で組んで、戸口まで歩いて来て雪を見ていた。その男が酒保に尋ねる。「誰が酒を飲んでいるんだ?」林冲がその男を見ると、頭には深い庇の暖かい帽子をかぶり、体には貂の皮の上着を着て、足には獐の皮の細い筒の長靴を履き、背が高く体つきが堂々としており、拳のような骨ばった顔に、三叉に分かれた黄色い髭を生やし、ただ頭を撫でながら雪を見ていた。林冲は酒保にどんどん酒を注げと言った。林冲が言う。「酒保、お前も一碗飲め。」酒保は一碗飲んだ。林冲が尋ねる。「ここから梁山泊まで、どれほどの道のりだ?」酒保が答える。「ここから梁山泊へ行くには、わずか数里ですが、みな水路で、陸路は全くございません。お行きになるなら、船を使わねば、あちらへ渡れません。」林冲が言う。「お前、私のために一隻船を探してくれ。」酒保が言う。「この大雪で、もう日も暮れました。どこに船を探せましょうか?」林冲が言う。「金は多く出すから、船を探して、私を向こうへ渡してくれ。」酒保が言う。「しかし、探す場所がございません。」林冲は考え込んだ。「これではどうしようもない。」さらに数碗酒を飲み、憂鬱がこみ上げてきて、ふと思い出した。「以前、都で教頭をしていた時は、毎日六街三市を遊び歩いて酒を飲んでいたのに、誰が今日、高俅という賊にこんなに陥れられようとは。顔に刺青を入れられ、ここまで追いやられ、家に帰ることも叶わず、国に身を投じることもできず、この寂しさを味わうとは!」感傷に胸を打たれ、酒保に筆と硯を借り、一時の酒の勢いに乗じて、あの白い漆喰の壁に八句の詩を書きつけた。「義を仗つは是れ林冲、人と為り最も朴忠。江湖に誉望を馳せ、京国に英雄を顕す。身世は浮梗を悲しみ、功名は転蓬に類す。他年若し志を得ば、威は泰山东に鎮まらん。」筆を投げ出し、再び酒を取った。
まさに飲んでいる間に、あの皮の上着を着た男が前に進み出て、林冲の腰を掴んで引き寄せ、言った。「お前、大胆だな! お前は滄州でとてつもない大罪を犯したのに、ここにいるとは! 今や官府は三千貫の賞金をかけてお前を捕まえようとしている。どうするつもりだ?」林冲が言う。「お前は私が誰だと言うのだ?」その男が言う。「お前は『豹子頭』の林冲ではないか?」林冲が言う。「私は張という姓だ。」その男は笑って言う。「馬鹿なことを言うな。今、壁にお前の名前が書いてあるし、お前の顔には金印が彫ってある。どうしてごまかせようか?」林冲が言う。「お前、本当に私を捕まえるつもりか!」その男は笑って言う。「私はお前を捕まえてどうする? お前、中へ入って来い。中で話そう。」その男は手を放し、林冲は後に従い、裏手の水亭へ行き、酒保に灯りを点けさせ、林冲と礼を交わし、向かい合って座った。その男が尋ねる。「先ほど兄貴がしきりに梁山泊への道筋を尋ね、船を探そうとされていたが、あそこは強人の山寨だ。あなたは何をしに行こうとしているのか?」林冲が言う。「実は隠さず申せば、今官府の追跡が厳しく、身を置く場所がなく、あの山寨の好漢たちの仲間に入れてもらおうと、わざわざ行こうとしているのだ。」その男が言う。「そうではありましょうが、必ず誰かの推薦があって、兄貴が仲間に入るのでしょう。」林冲が言う。「滄州横海郡の旧友が推薦してくれたのだ。」その男が言う。「まさか『小旋風』の柴進殿では?」林冲が言う。「あなた様はどうしてそれをご存知で?」その男が言う。「柴大官人は山寨の大王頭領と深い交わりがおありで、常に手紙のやり取りがあります。」もともと王倫は志を得なかった頃、杜迁と共に柴進を頼り、柴進が彼らを荘園に留めて、しばらくの間住まわせた。去る時には旅費の銀両も援助したため、恩があったのだ。林冲はこれを聞き、すぐに拝して言う。「目はあっても泰山を見ず、どうかご尊名をお教えください。」その男は慌てて礼を返し、言う。「私は王頭領の配下の眼目で、姓は朱、名は貴、もとは沂州沂水県の者で、江湖では私のことを『旱地忽律』と呼びます。山寨では私にここで酒店を開くことを名目に、専ら行き交う客商の様子を探らせています。金目の物があれば、山寨へ報せに行くのです。しかし、独り者の客がここに来て、金目の物がなければ、そのまま通し、金目の物があれば、ここに来たところで、軽ければ蒙汗薬で眠らせ、重ければその場で始末し、精肉は干し肉に切り、脂身は油を煎って灯りにします。先ほど兄貴がしきりに梁山泊への道筋を尋ねられたので、手を出せなかったのです。後に偉大なご名声をお書きになったのを見て、都から来た者が、兄貴の豪傑ぶりを伝えていたのを思い出しました。まさか今日お会いできるとは思いませんでした。柴大官人の推薦状をお持ちなら、兄貴の名声は四海に轟いておりますゆえ、王頭領もきっと重用されるでしょう。」すぐに魚や肉、皿盛りの野菜、酒の肴を用意して、もてなした。二人は水亭の上で、夜半まで酒を飲んだ。林冲が言う。「どうすれば船で渡れるのか?」朱貴が言う。「ここに船はございます。兄貴、ご安心ください。ひと晩お泊まりください。五更になりましたら起こしますので、ご一緒に向かいましょう。」その時、二人はそれぞれ休みに行った。
五更の頃まで眠り、朱貴が自ら来て林冲を起こした。顔を洗い、身支度を整え、再び三五杯の酒でもてなし、肉類などを少々食べた。この時、まだ夜は明けていなかった。朱貴は水亭の窓を開け、一枚の鵲画弓を取り出し、一本の鳴り矢を番え、対岸の枯れた芦や折れた葦の中を狙って射た。林冲が尋ねる。「これはどういう意味だ?」朱貴が言う。「これは山寨の合図の矢で、しばらくすれば船が来ます。」間もなく、対岸の蘆の泊まりから三、五人の小喽啰が、一艘の快速船を漕いで来て、水亭の下まで来た。朱貴はその時、林冲を連れ、刀や杖、荷物を取って船に乗った。小喽啰たちは船を漕ぎ出し、泊まりの中を金沙滩へ向かった。林冲が見ると、あの八百里の梁山の水泊は、確かに人が入れば出て来られない場所だった。見よ:
山は巨浪を排し、水は遠天に接す。乱れ芦は万隊の刀槍を攒め、怪樹は千層の剣戟を列す。壕辺の鹿角は、ことごとく骸骨を攒めて成り、寨内の碗瓢は、全く髑髏を用いて作る。剥ぎ取った人皮で戦鼓を張り、截り来たった髪の毛で手綱をなす。官軍を阻むには、無数の断頭の港あり、盗賊を攔截するには、多くの絶路の林巒あり。鵞卵石は畳々として山の如く、苦竹の槍は森々として雨の似し。断金亭の上には愁雲起こり、聚義庁の前には殺気生ず。
その時、小喽啰たちは船を金沙滩の岸まで漕ぎ着け、朱貴は林冲と共に岸に上がった。小喽啰が包みを背負い、刀や杖を持ち、二人の好漢は山寨へと向かった。あの数人の小喽啰は、自分たちで船を小さな港の中へ漕いで行った。林冲が岸の上を見ると、両側には抱えるほどの大木が茂り、半山には一つの断金亭があった。さらに曲がって来ると、大きな関所が見え、関の前には槍、刀、剣、戟、弓、弩、戈、矛が並べられ、四方には擂木や砲石が積まれていた。小喽啰が先に知らせに行った。二人が関所に入ると、両側の夾道には一面に隊伍と旗印が並べられていた。さらに二つの関所を通り過ぎて、ようやく寨の門に着いた。林冲が見ると、四方は高山に囲まれ、三つの関所が雄壮に、ぐるりと取り巻いていた。中央は鏡の面のように平らな土地で、方三五百丈もあった。山の口に寄り添って、ようやく正門があり、両側にはすべて耳房があった。
朱貴は林冲を連れて聚義庁に来た。中央の交椅には一人の好漢が座っていた。正に「白衣秀士」の王倫である。左の交椅には摸著天の杜迁が座り、右の交椅には雲里金剛の宋万が座っていた。朱貴と林冲は前に進み出て、声をかけ礼をした。林冲は朱貴の傍らに立った。朱貴が言う。「こちらは東京八十万禁軍の教頭で、姓は林、名は冲、綽名は『豹子頭』と申します。高太尉の讒言に遭い、刺されて滄州に流され、そこでまた大軍の草料場を焼かれてしまいました。やむなく三人を殺し、柴大官人の家に逃げ込み、大変敬重されておりました。そこで、わざわざ手紙を書いて、仲間入りを推薦されたのです。」
林冲は懐中から書状を取り出して差し出した。王倫はそれを受け取り、封を切って読むと、林冲を招いて第四の席に座らせ、朱貴は第五の席に座った。すぐに小喽啰に酒を持って来させ、三巡ほど飲み交わしてから、柴大官人の近頃の様子を尋ねた。林冲は答えた。「毎日ただ郊外で狩りをして楽しんでおられます。」王倫はしばらく問答した後、ふと考え込んだ。「我は落第した秀才で、一つの癪に障り、杜迁と連れ立ってここで草莽に落ちた。その後、宋万も加わり、これだけの人馬を集めた。我には大した腕前もなく、杜迁や宋万の武芸も並みだ。今、わけもなくこの者が加わった。彼は都の禁軍の教頭で、必ずや武芸に秀でている。もし我々の事情を見抜かれたなら、きっと勢いを張るだろう。そうなれば我々はどう対処すればよい?いっそ悪者になり、何か理由をつけて山から追い払ってしまおう。後々の禍根を残さぬためだ。ただ柴進の顔を立てるのが難しく、昔の恩義を忘れることになるが、今はそれも顧みられぬ。」まさに、
未だ豪気を同じうせずんば豈に相求めんや、英雄に逢うとも留めず。秀士は自ら来たりて多きに嫉妬し、豹頭は空しく嘆きて封侯を覓む。
その時、王倫は小喽啰に命じて酒食を用意させ、宴席を整え、林冲を席に招いた。皆の好漢が共に酒を飲んだ。宴が終わりに近づくと、王倫は小喽啰に盆に五十両の白銀と二匹の纻絲を載せさせた。王倫は立ち上がって言った。「柴大官人が教頭を我々の山寨に入伙させるよう推薦されましたが、生憎小寨は食糧が不足し、家屋も整わず、人手も薄く、後日あなた様の足を引っ張ることになり、体裁も悪いでしょう。粗末なものを少しばかり用意しましたので、お受け取りください。他に大きな寨を探して、馬を休めてください。お気を悪くなさらないでください。」林冲は言った。「三人の頭領、お聞きください。小生は『千里に名を投じ、万里に主を投ずる』、柴大官人のお顔を立てて、まっすぐに大寨に参って入伙いたしました。林冲は不才ながら、お受け入れいただきたい。命を懸けて前に進み、決してお世辞など申しません。それが一生の幸せでございます。銀目のために来たのではございません。頭領、お察しください。」王倫は言った。「ここは小さな所で、どうしてあなたを置けようか?お気を悪くなさらず、お気を悪くなさらず。」朱貴はこれを見て、諫めて言った。「兄貴、お許しください。口出しするのを。山寨には食糧が少ないとはいえ、近隣の村々から借りることはできます。山場や水泊には材木が多く、千もの家を建てることも問題ありません。この方は柴大官人が力強く推薦された方です。どうして他所へやれましょう?それに柴大官人は以前から山寨に恩がございます。後日、我々がこの方を受け入れなかったと知れば、恐らく体裁が悪いでしょう。この方はまた腕のある方で、必ず力を貸してくれるでしょう。」杜迁が言った。「山寨に一人くらい何の影響もない!兄貴がお受けにならなければ、柴大官人が知った時に見咎められ、我々が恩知らずだと示すことになる。以前は彼に大いに助けられた。今日、一人を推薦して来たのに、こうして断り、追い払うのか!」宋万も諫めて言った。「柴大官人のお顔を立てて、彼をここで頭領の一人としてお許しになるのがよろしい。さもなければ、我々には義理がないと示し、江湖の好漢たちに笑われるでしょう。」王倫は言った。「兄弟たちは知らない。彼は滄州で重罪を犯したが、今日山に上がって来たのは、真心か偽りか分からない。もし様子を探りに来たのだとしたら、どうする?」林冲は言った。「小生は一身に死罪を負い、そのために身を投じて入伙しようと参りました。なぜ疑われるのですか?」王倫は言った。「そうならば、もし真心で入伙するなら、『投名状』を一つ納めよ。」林冲は言った。「小生は字をいくつか知っております。紙と筆をお出しください。すぐに書きましょう。」朱貴は笑って言った。「教頭、あなたは間違えました。好漢が入伙するには、必ず投名状を納めなければなりません。それは山を下りて一人を殺し、その首を差し出すことです。そうすれば疑いはありません。これを投名状と言います。」林冲は言った。「この事も難しくはない。林冲は山を下りて待ちましょう。ただ人が通らないのが心配です。」王倫は言った。「三日の期限をやろう。もし三日以内に投名状があれば、入伙を許す。もし三日以内になければ、私を恨むなよ。」林冲は承知し、自分の部屋に戻って休んだ。心は晴れず、憂鬱であった。まさに、
愁懐鬱々として苦しみ開き難く、恨む可し王倫のますます弄る乖きを。明日早く山路を尋ねて行かん、知らずあの誰が頭を送り来るを。
その夜、宴は散り、朱貴は別れを告げて山を下り、自分の酒店の見張りに出かけた。
林冲は夜になり、刀杖や荷物を持ち、小喽啰に連れられて客室で一夜を明かした。翌朝早く起き、茶飯を少し取り、腰刀を差し、朴刀を提げ、小喽唠に案内させて山を下り、船で渡り、人気のない小道で客の通りを待った。朝から晩まで一日待ったが、一人の孤独な客も通らなかった。林冲は憂鬱で、小喽啰と共に再び船で戻り、山寨に帰った。王倫が尋ねた。「投名状はどこにある?」林冲は答えた。「今日は一人の通りもなく、そのため得られませんでした。」王倫は言った。「明日も投名状がなければ、ここに留まるのは難しい。」林冲はそれ以上答えず、心の中で不機嫌になり、部屋に来て、飯を少し頼み、食べて、また一夜を明かした。
翌朝早く起き、小喽唠と共に朝飯を食べ、朴刀を持ち、また山を下りた。小喽唠が言った。「今日は南山の道で待ちましょう。」二人は林の中に隠れて待ったが、一人の客も通らなかった。昼時まで待つと、一団の客が約三百人ほど、連なって通り過ぎた。林冲はまた手を出せず、彼らが過ぎるのを見ていた。さらにしばらく待つと、空はすっかり暮れかけ、また一人の客も通らなかった。林冲は小喽唠に言った。「私はこんなに不運で、二日待っても、一人の孤独な客も通らない。どうすればいい?」小喽唠は言った。「兄貴、心配なさらずに。明日もまだ期限が一日あります。兄貴と私で東山の道に行って待ちましょう。」その夜もやはり山に上がった。王倫が言った。「今日の投名状はどうだ?」林冲は答えられず、ただため息をついた。王倫は笑って言った。「今日もなかったのだろう。三日の期限を言ったが、今日で二日だ。もし明日もなければ、もう会うことはない。どうか山を下りて、他へ行かれてください。」
林冲は部屋に戻り、心の中は実に塞ぎ込んだ。『臨江仙』の詞一首がある。
悶えること蛟竜の海島を離るるが如く、愁うること虎の荒田に困るが如し、秋を悲しむ宋玉の涙漣々。江淹筆を初めて去り、項羽船無きを恨む。高祖は滎陽に遭い困厄し、昭関には伍相の憂い煎る。曹公赤壁に火連天し、李陵台の上に望み、蘇武は居延に陷る。
その夜、林冲は天を仰いで長嘆した。「思いもよらず、我は今日、高俅という賊に陥れられ、ここに流れ着き、天地も我を容れず、運命がかくも坎坷とし、時運がかくも不順であるとは!」一夜を過ごし、翌朝明るくなって起き、飯を少し取り、あの包みをまとめ、部屋に置いた。腰刀を差し、朴刀を提げ、また小喽唠と共に山を下りて川を渡り、東山の道に向かった。林冲は言った。「今日も投名状を得られなければ、他に行って身を置く場所を探すよりほかない。」二人は山の下の東路の林の中に隠れて待った。日が真上に来るのを見ても、また一人も来なかった。
その時、ちょうど残雪が初めて晴れ、空は澄んで明るかった。林冲は朴刀を提げて小喽唠に言った。「どうやらまた駄目だ。早いうちに、まだ日が暮れぬうちに、荷物を取って、他に場所を探しに行こう。」小校は指を指して言った。「よし!あそこに一人来たではないか?」林冲が見ると、「ああ、ありがたい!」と叫んだ。あの者は遠くの山の麓の方から歩いて来るのが見えた。彼がかなり近づいて来た時、林冲は朴刀を横に構え、猛然と飛び出した。その男は林冲を見て、「ああ!」と叫び、担子を投げ出して、向きを変えて逃げ出した。林冲は追いかけたが、どこまで追いつけるものか、その男は山の麓を回って行ってしまった。林冲は言った。「見ろ、我が命の苦しさよ!三日も来て、やっと一人が来たと思ったら、また逃げられた。」小校は言った。「人を殺せなかったとはいえ、この一担の財物で代わりになるでしょう。」林冲は言った。「お前が先に担いで山に上がれ。私はもう少し待つ。」小喽唠は先に担子を林の外に担ぎ出した。
すると、山の麓から一人の大男が現れた。林冲はそれを見て言った。「天が好機を授けた。」その男は朴刀を突き出し、雷のような大声で叫び、怒鳴った。「この盗人め、殺しても尽きぬ賊ども、我が荷物をどこへ持って行く?老子はお前たちのような奴を捕まえようと思っていたところだ。よくも虎の鬚を撫でに来たな。」飛ぶように躍り掛かって来た。林冲は彼の勢いが猛々しいのを見て、自らも歩を進めて迎え撃った。
この者、林冲と立ち合わねば、いわくあり。梁山泊の内に、風を弄ぶ白額の大虫を幾頭か加え、水滸寨の中に、谷を跳ぶ金睛の猛獣を幾匹か揃うべし。果たして林冲と立ち合いに来たる者、正に何者ぞ。且く下回の分解を聴け。
