モバイルで快適に読む 『西廂記』アプリ:全文検索、しおり、読み上げ、オフライン
テーマ
文字サイズ 18
第三本 張君瑞害相思

第三本 張君瑞害相思 第四折

第 16 篇

【越調】【鬪鵪鶉】君が彩筆にて詩を題し、回文を織りし故に、人をして床に臥し起き上がらせず、寝食を忘れしむ。潘岳の如く髪を白く痩せしめ、沈約の如く腰を細く痩せしむ。恨みは既に深く、病は既に重し。昨夜は熱き面を以て当面に咎めを受けたるに、今日は又冷ややかなる言葉にて人を欺く。昨夜の如く彼を咎めたり。

【紫花兒序】君が門に倚りて月を待ち、韻に従ひて詩を聯ね、耳を傾けて琴を聴くに如かず。彼に逢ひては虚仮に多くの言葉を述べ、「張生、我と汝とは兄妹の礼あり、何事ぞ」と怒れる時は一介の書生を呵す。喜べる時は「紅娘、好姐姐、彼の許に行きて見よ」と一介の侍妾を逼る。忍び難く、我をして線脚の如く針を離れざらしむ。今より後は彼を放任せん。是れ実に老夫人の過ちなり。人の恩深きを以て、皆遠水遠山と為す。

【天浄紗】心に学海文林を存せず、夢に柳影花陰を離れず、只だ窃玉偷香の上にのみ心を用ふ。未だ曾て得る所あること無し、海棠開きしより今に至るまで。何が故に斯くの如く病めるや。

【調笑令】我ここに自ら思量す、此の病は邪淫の為なり、尸骨嶙嶙として鬼病侵す。更に秀才は元来斯くの如しと做す。斯くの如き干相思ひは愚かなり。功名の上には早く心に適はず、婚姻の上には更に反吟復吟す。

【小桃紅】「桂花」影を揺るがし夜深沉、酸醋「当帰」に浸す。面は湖山に背き陰裡に蔵す。此の方児は最も尋ね難く、一服二服して人を斯くの如くならしむ。忌むのは「知母」の未だ寝ざるを忌み、怕るるは「紅娘」の撒泼を怕る。吃み了らば、穩やかに那の「使君子」一星の「参」を取らん。此の薬方児は、小姐の自筆にて書きたるものなり。

【鬼三台】足下実に愚かなり、装ひて呆けを休めよ。笑ふ君が風魔の翰林、佳音を問ふべき所無く、信帖の上に計謀す。得たる一紙の条児は此の如く綿裡の針、若し玉天仙を見ば怎生に軟厮禁せん。俺が那の小姐は恩を忘れ、緊に佝人の負心を為す。書上の言は如何に?我に読みて聴かせよ。

【秃厮児】身は一条の布被を臥し、頭は三尺の瑶琴を枕とす。彼来らば怎に汝と一処に睡らん。凍えて戦戦兢兢たり、何を以て知音と謂はん。

【聖薬王】果して汝に心有り、彼に心有り。昨日は秋千の院宇深沈として、花に陰有り、月に陰有り。「春宵一刻値千金」、何ぞ須ひ「詩対会家吟」を。

【東原楽】俺が那の鴛鴦枕、翡翠被は、便ち人の心を遂げしむるも、如何にして肯て賃せん。汝が衣を脱解せず和衣するも更に何を怕るるに如かず。手に指尖を執りて斯くの如くするに強からずや。倘或は成親せば、大いに来りて福蔭あらん。

【綿搭絮】彼が眉は遠山の翠ならず、眼は秋水の光無し。体は凝酥の若く、腰は弱柳の如し。俊なるは臉児、俏なるは心、体態は温柔、性格は沈む。雖も法灸神針を会せざれども、更に救苦救難観世音に勝る。

【幺篇】汝が口裡に漫吟し、夢裡に苦しく尋ね追ふ。往事已に沈み、只だ目今を言ふ。今夜の相逢は管んで斯くの如くならしめん。何をか汝が白璧黄金を貪らん。只だ汝が満頭の花、地を拖く錦を願ふ。

【煞尾】老夫人昼夜に門を禁ずと雖も、好悪共に須く汝をして心を称せしめん。来る時節肯んずるか否かは尽く彼に由れ、見る時節親しきか否かは汝に在り。

【絡絲娘煞尾】今宵伝話送語の因りて、明日の携雲握雨を看ん。