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第二本 崔鶯鶯夜聽琴

第二本 崔鶯鶯夜聴琴・楔子

第 8 篇

【杜将軍、士卒を率いて登場し開場】林の下で衣を干すに日光の淡きを嫌い、池にて足を洗うに魚の腥きを恨む。花は本来艶やかにして公卿の子弟、虎の紋様は元より斑らにして将相の後裔。我が姓は杜、名は確、字は君実、祖籍は西洛の人なり。幼きより君瑞と共に儒業を学び、後に文事を棄てて武芸に改む。当年武舉に及第し、官は征西大将軍に拝せられ、正式に管軍元帥を授かり、十万の軍隊を統領し、蒲関を鎮守す。河中府より人来り、君瑞兄弟が普救寺に在るを聞くも、我を訪れず。使いを遣わして請うも、彼も肯んじて来たらず。何の意図なるかを知らざるなり。今、丁文雅の治めること当を得ず、国法を守らず、百姓を掠奪すると聞く。我、虚実を詳らかにせざるを以て、軽率に出兵する能わず。《孫子の兵法》に曰く:「凡そ兵を用いるの法は、将軍は国君より命令を受け、軍を集め衆を聚め、難地に宿することなく、衢地には諸侯を交わり、絶地には留まることなく、囲地には謀り、死地には戦う。ある道は行かず、ある軍は撃たず、ある城は攻めず、ある地は争わず、ある君命は受けず。故に将、九変の利に通ずる者は、兵を用いることを知るなり。軍を治めて九変の術を知らざれば、五利を知ると雖も、人の用を為す能わず。」我が直ちに進兵して征討せざる所以は、地理の深浅と敵軍の出没の状を知らざるが故なり。昨日遣わしし探り手、未だ還報せず。今、帳を升け、軍情の如何を見て、我に報告せよと知らせよ。【士卒、恵明和尚を連れて登場し開場】【恵明曰く】我、普救寺を離れ、一日にして蒲関に到る。杜将軍に会わんと一往せん。【士卒報告の科】【将軍曰く】彼をして来たらしめよ!【恵明、問訊を打ちて曰く】貧僧は普救寺より来たれり。今、孫飛虎の乱を為す有り、半万の賊兵を率い、寺門を囲み、已故の大臣崔相国の女を奪いて妻とせんと欲す。遊客の張君瑞有り、書を書きて我をして麾下に拝投せしめ、将軍の解救の急難を請わんと欲す。【将軍曰く】書を取れ!【恵明、書を投ずるの科】【将軍、書を開き読みて曰く】張珙、叩頭再拝して大元帥将軍契兄大纛の下に呈す。洛陽に在りしより、尊顔に別れ、寒暑屡々阻隔し、歳月を積むこと已に久し。徳行を仰ぐの私心、銘心刻骨す。当年、風雨に対し床を共にせしを思い、今、各々天涯に漂泊するを嘆ず。客中の況味また肺腑に生じ、離別の愁いは羈旅の懐を慰むるに堪えず。貧居十年、粗食を喫し、他郷に奔走困頓せしを思う。将軍の威厳、百万の勇猛の軍を統べ、安んじて辺境に坐鎮するを羨む。故に知る、虎将は天の俸禄を享け、天子の儀表を瞻仰し、大徳は常人に過ぐ。微賎の我、その顔を仰ぎ、その書を望み、心の中に聊か慰む。乃ち禀告す。小弟、家を離れ、本と将軍の帳下に赴き、数年来の離別の情を叙せんと欲す。然るに河中の普救寺に至り、忽ち病に遭い、直ちに往くに及ばず。不図、賊将孫飛虎、半万の兵を領し、已故の大臣崔相国の女を奪わんと欲す。実に危急狼狽なり。小弟の性命も、亦た頃刻の間に在り。万一朝廷の知る所とならば、この罪は誰に帰すべきか?将軍、もし旧交を棄てず、一軍を出さば、上は以て天子の恩徳に報い、下は以て百姓の急難を救い、已故の相国をして九泉の下に在りと雖も、将軍の恩徳を埋没せしめざるべし。願わくは将軍、虎の書を視るが如くし、小弟をして鵝の旌旗を望むが如くならしめよ。冒瀆して、勝って愧赧に堪えず。跪いて照察を請い、更に縷縷を尽くさず。張珙再拝。二月十六日の書。【将軍曰く】然らば、和尚先ず行け、我、後れて来たるべし。【恵明曰く】将軍、必ず速やかに来たれ!【仙呂】【賞花時】彼の奴、百姓を掠奪し徳行浅く、将軍、辺境を鎮守し機変広し。彼が滔天の大罪、百種千般あり。将軍もし管せずんば、縦にて賊寇をして肆意に横行せしむ。【幺篇】即ち是れ将軍の坐視して朝廷を欺き君を瞞るなり。能く妖気を掃蕩し百姓をして歓欣せしめ、戦事息み、大功成る。歌謡、四方に伝わり、名声、金鑾殿に到る。【将軍曰く】皇帝の旨を下して兵を発すと雖も無し、「将軍は軍中に在り、君命も受けざる有り」。大小三軍、我が将令を聴け。速やかに五千の馬を点じ、人人嘴に枚を銜え、馬をして口を勒めしめよ。夜を徹して出発し、直ちに河中府普救寺に至りて張生を救わんと一往せよ。【孫飛虎、士卒を率いて登場し開場】【将軍、士卒を率い竹馬に騎り陣を調え、捉え縛り下す】【崔夫人、法本長老、同じく張生登場】【夫人曰く】書を送りて已に二日、回音を見ず。【張生曰く】山門の外に呐喊し旗を揺るるは、我が兄の到れるに非ずや。【張生、将軍に会うの科】【夫人を引きて拝するの科】【将軍曰く】杜確、防御を失い、老夫人をして驚かしめしを致す。咎むること勿れ!【張生、将軍を拝するの科】兄の尊顔に別れしより、一向に教えを失う。今、一見を得るは、雲を撥きて日を見るが如し。【夫人曰く】我が母子二人の性命は、将軍の賜う所の如し。何を以て報いん?【将軍曰く】恐れ入る。これ職分の内に当たりて為すべきなり。請問す、賢弟、何が故に軍営に来たらざる?【張生曰く】小弟、来たらんと欲すれども、折悪しく病に遭い、動く能わず。故に失礼す。今、夫人の困るを見るに、彼、能く賊を退くる者は、小姐を以て之に嫁せんと曰う。故に愚弟、書を書きて兄を請い来たらしむ。【将軍曰く】既に此の姻縁有り、賀すべし、賀すべし!【夫人曰く】茶飯を整えよ!【将軍曰く】及ばず。未だ残餘の党羽を清剿せず。小官、彼等を捉えん。然る後、賢弟を見舞わん。左右、何れに在るか、孫飛虎を斬れ!【賊を捉えるの科】本と斬首して衆に示し、表を奏して朝廷に報じ、丁文雅の守を失うの罪を暴かんとす。然れども未だ叛かざる者あるを恐る。今、首たる者を各々一百棍に打ち、余の者は皆、原の軍営に放ち還せ!【孫飛虎、謝するの科】【将軍曰く】張生、賊を退くるの計を献じ、夫人、面して親を許すに当たる。前言に違わずんば、淑女以て君子に配すべし。【夫人曰く】恐れ多くは小女、君子を辱めん。【張生曰く】将軍、宴に赴け!【将軍曰く】我、宴席を食らわじ。我、営に還り、他日来たりて慶賀せん。【張生曰く】敢えて兄を久しく留めず。有労なるかな。【将軍、蒲関に向かい出発す】【衆人念じて曰く】馬、普救を離れ金鐙を敲き、人、蒲関を望み凱歌を唱う。【下】【夫人曰く】先生の大恩、忘るる能わず。今より以後、先生、寺に居ること勿れ。只、僕をして寺に馬を養わしめ、先生、家の書院に至りて安歇せよ。我已に整え了せり。即ち移り来たれ。明日に至り、聊か酒菜を備え、紅娘をして請ぜしめん。先生、必ず一會せよ。別に議する有り。【下】【張生曰く】此の事、皆、長老に託せり。【法本に問うて曰く】小子の親事、如何なるか知らざるなり?【法本曰く】鶯鶯の親事、已に定まりて汝に許せり。只、戦火の到来するが故に、雲雨の心を起こす。【下】【張生曰く】小子、行李を收拾して花園に到らんとす。【下】