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西遊記

第二十一回 護法荘を設けて大聖を留む 須彌霊吉風魔を定む

第 21 篇

第二十一回 護法設庄留大聖 須彌霊吉定風魔

さて、その五十の敗れて逃げ散った小妖たちは、破れた旗や破れた太鼓を持って、洞窟に闖入し、報告した。「大王、虎先鋒はあの毛むくじゃらの和尚に敵わず、彼に追われて東の山のふもとへ行ってしまいました。」老妖はこれを聞いて、非常に悩んだ。ちょうど頭を垂れて黙り込み、ひそかに計略を練っていると、また前門を守る小妖が来て報せた。「大王、虎先鋒はあの毛むくじゃらの和尚に打ち殺されました。しかも死体を引きずって門前で罵っております。」その老妖はこれを聞いて、ますます悩み、「この奴め、全く事の善悪もわからぬ。我はまだその師匠を食っておらぬのに、奴め、我が先鋒を打ち殺した。憎い!憎い!」と言った。そして叫んだ。「具足を取って来い。我もただ孫行者というものを聞いているだけだ。出て行って、どんな九つの頭と八つの尾を持つ和尚か見てやろう。捕まえて来て、我が虎先鋒の命を償わせる。」衆の小妖たちは急いで具足を運び出した。老妖は身なりを整え、手近にあった三股の鋼叉を一振り掴み取り、群妖を率いて洞窟の外へ飛び出した。

その孫大聖は門の外に立って、その妖怪が出て来るのを見ると、実に勇猛であった。その装いを見よ、次のように:

金の兜は日光に輝き、金の鎧は光を集める。兜の上には山鶏の尾の飾りが揺れ、羅の袍は淡い鵞黄色の鎧を包む。鎧を締める帯は盤龍が輝き、胸当ての鏡は目をくらませる。鹿皮の靴は槐の花で染められ、錦の腰巻きは柳の葉の飾りで縁取られる。手に持つは鋭利な三股の鋼叉、その様は昔の顕聖二郎真君に劣らぬ。

その老妖は門を出ると、鋭い声で高く叫んだ。「どれが孫行者だ?」この行者は虎の怪の皮袋を足で踏みつけ、如意の鉄棒を手にして答えた。「お前の孫の外公がここにいる。我が師匠を出せ。」その怪はじっくりと見ると、行者の体つきが矮小で見窄らしく、顔は痩せ細り、身の丈は四尺にも満たないのを見て、笑った。「哀れな、哀れな。私はてっきりどんな倒れぬ豪傑かと思っていたら、なるほど骸骨のような病気の奴だったか。」行者は笑って言った。「この子め、全く目が利かぬ。お前の外公は背は小さいが、もしお前が進んで狙いを定めて叉の柄を一撃くれるなら、我は三尺は背を伸ばすぞ。」その怪は言った。「お前、頭を固くして、我が一撃を受けよ。」大聖は全く恐れなかった。その怪は確かに一撃を加えた。彼は腰をかがめると、たちまち三尺伸び、丈余りの長さになった。驚いたその妖は慌てて鋼叉を押さえ、喝した。「孫行者、どうしてお前はその護身の変化の術を、我が門前に来て使うのか。虚仮を見せるな。進んで来い、我と手合わせをしよう。」行者は笑って言った。「子よ、常に言うことだ。『情を留むれば手を挙げず、手を挙ぐれば情を留めず』と。お前の外公の手は重い、お前はこの一撃に耐えられまいぞ。」その怪は言い分を聞かず、鋼叉を回し、行者の胸に向かって突き刺した。この大聖はまさに会得した者は慌てず、慌てる者は会得せず、鉄棒を繰り出し、「烏龍の地を掠める勢い」を用いて鋼叉を払いのけ、また頭を狙って打ち下ろした。二人はその黄風洞口で、この凄まじい戦いを繰り広げた:

妖王は怒りを発し、大聖は威力を示す。妖王は怒りを発し、行者を捕らえて先鋒の命を償わせようとし、大聖は威力を示し、精霊を捕らえて長老を救おうとする。叉来たれば棒で受け、棒行けば叉で迎える。一人は山を鎮める総帥、一人は法を護る美猴王。初めは土煙の中で戦い、後にはそれぞれ騰って空中に至る。点鋼叉、先は尖り鋭く、如意棒、身は黒く箍は黄。突かれれば魂は陰府に帰し、打たれれば必ず閻王に会う。全ては手の速さと目の鋭さに懸かり、力強く体丈夫でなければならぬ。両家、命を捨てて忘れて戦う、どちらが無事でどちらが傷つくか知れぬ。

その老妖と大聖は三十合戦って、勝敗がつかなかった。この行者は功績を立てようとし、「身外身」の手段を用いた。毫毛を一掴み引き抜き、口で細かく嚼み砕き、上に一吹きして、「変われ!」と叫んだ。すると百十の行者に変わり、皆同じ装いで、各々一本の鉄棒を持ち、その怪を空中に囲んだ。その怪は恐れ、自らの本領をもって応じた。急いで振り返り、巽の方角(東南)に向かい、口を三度開け閉じし、ふうっと一息に息を吹きかけると、忽然として、一陣の黄風が空中より巻き起こった。良い風だ、実に凄まじい:

冷ややかに天地は色を変え、影も形もなく黄砂が旋回する。

林を抜け山嶺を折って松や梅を倒し、土埃を巻き上げ山の頂を崩す。

黄河の波は激しく濁り尽くし、湘江の水は湧き上がり波を翻す。

碧天は震えて斗牛宮を揺るがし、あわや森羅殿を倒さんとする。

五百羅漢は天を騒がせ、八大金剛は声を揃えて騒ぐ。

文殊菩薩の青毛の獅子は逃げ去り、普賢菩薩の白象は見つけ難し。

真武大帝の亀蛇は群れを失い、梓潼帝君の騾馬は手綱を漂わす。

行商は叫んで天に告げ、船頭は拝して様々な願いを許す。

煙波の命は浪の中に漂い、名利の残る生は水に従い去る。

仙山洞府は黒く沈み、海島蓬萊は暗く昏い。

老君は丹炉を顧みるに暇なく、寿星は竜鬚扇を収めしまう。

王母はまさに蟠桃会に赴くところ、一陣の風に裙の腰飾り乱れ飛ぶ。

二郎神は灌州城に迷い、哪吒は匣の中の剣を取り出し難し。

天王は手の中の塔を見えず、魯班は金頭の鑢を落とし失う。

雷音宝殿は三層も倒れ、趙州石橋は二つに断ち切られる。

一輪の紅日は揺れて光を失い、満天の星斗は皆暗く乱れる。

南山の鳥は北山へ飛び、東湖の水は西湖へと溢れる。

雌雄は別れて呼び交わさず、子母は離れて叫び合うも叶わず。

竜王は海を遍く夜叉を探し、雷公は至る所で電光を尋ねる。

十代の閻王は判官を探し、地府の牛頭は馬面を追う。

この風は普陀山を倒し、観音の経典一巻を巻き上げる。

白蓮の花は落ちて海辺に飛び、菩薩の十二の院を吹き倒す。

盤古が天を開いてより今日まで風を見たれど、この風のような凶悪なものは無し。

轟と、乾坤はあわや炸裂し崩れんとし、万里の江山は震え揺るぐ。

その妖怪はこの一陣の狂風を放ち、孫大聖の毫毛が変じた小行者たちを半空中で紡ぎ車のようにぐるぐると回らせ、棒を振るうどころか、身に近づくこともできなかった。慌てた行者は毫毛を一振りして、身に収めた。独りで鉄棒を掲げ、進み出て打とうとした。またその怪に面と向かって黄風を一口吹きかけられ、両の火眼金睛はきつく閉ざされ、開くことができなかった。そのため鉄棒を使うことも叶わず、敗れ去った。その妖は風を収めて洞窟に帰ったことは言うまでもない。

さて、猪八戒はその黄風が大いに起こり、天が昏く地が暗くなるのを見て、馬を引き、荷物を守り、山の窪みに伏せて、目を開くことも、頭を上げることもできず、口の中で絶えず念仏し願をかけていた。また行者の勝敗は如何に、師匠の死活は如何にとも知れなかった。まさにその疑い考えている時、すでに風は止み空は晴れていた。突然頭を上げてその洞門の前を見ると、兵器も見えず、銅鑼や太鼓の音も聞こえなかった。呆子は彼の門前に進むこともできず、馬や行李を守る者もなく、まさに進退両難、恐れ慌てた。憂慮している間に、孫大聖が西の方から呼ばわりながらやって来るのを聞き、彼はようやく身を起こして迎え、「兄貴、凄まじい風でしたな!あなたはどこから来られたのです?」と言った。行者は手を振って言った。「凄まじい、凄まじい!我が老孫、人間になってからこの方、こんな大風は見たことがない。あの老妖は一振りの三股鋼叉を使って、老孫と戦った。三十数合戦って、老孫が『身外身』の術を使って彼を包囲して打ったところ、彼は非常に焦って、この風を出したのだ。確かに凶悪で、我も立っておられず、術を収めて、風に逆らって逃げたのだ。——ふん、凄まじい風だ!ふん、凄まじい風だ!老孫も風を呼び、雨を呼ぶことはできるが、この妖精の風のような凶悪なものではない。」八戒が言った。「兄貴、あの妖精の武芸はどうでした?」行者が言った。「まあまあだな、叉法も一応整っており、老孫と互角に戦った。ただ風が凄まじすぎて、勝ち難い。」八戒が言った。「これではどうやって師匠をお救いするのです?」行者が言った。「師匠を救うのはしばらく待って、また考えよう。ここに眼科の先生がいるかどうか知らぬが、先ず我の目を治してもらいたい。」八戒が言った。「あなたの目はどうしたのです?」行者が言った。「我はあの怪に一口の風を吹きかけられ、目玉が痛くなり、今は冷たい涙が止まらず流れている。」八戒が言った。「兄貴よ、この山の中では、また日も暮れかかっている。眼科の話はさておき、泊まる場所さえありません。」行者が言った。「泊まる場所を探すのは難しくない。我は思うに、あの妖精はまだ師匠を傷つけることはできまい。先ず大路に出て、人の家を探して泊めてもらい、この一夜を過ごし、明日の夜明けに、また降妖に来よう。」八戒が言った。「そうだ、そうだ。」

そこで彼は馬を引き、荷物を担いで山のくぼみを出て、道の辻に来た。この時、次第に黄昏が訪れ、ただ道の南の山の麓で犬の鳴く声が聞こえた。二人は足を止めて見渡すと、一軒の農家があり、ぼんやりと灯りがともっているのが見えた。彼ら二人は道があるかどうかも構わず、草むらに沿って歩いて行き、その家の門口にまで至った。見ると:

紫の芝が茂り、白い石が青々としている。紫の芝が茂り青草多く、白い石は青々として半ば苔むす。いくつかの小さな蛍がきらきらと光り、一林の野木がびっしりと並ぶ。香蘭は芳しく、若竹は新たに植わる。清い泉は曲がった谷を流れ、古い柏は深い崖に寄り添う。場所は辺鄙で更に訪れる客もなく、門前にはただ野花が盛んに咲くのみ。

彼ら二人は勝手に踏み込むことができず、ただ声を張り上げて「開けてくれ、開けてくれ!」と叫んだ。そこに一人の年寄りが、数人の若い農夫を連れ、熊手や箒を持って一緒にやって来て、「何者だ?何者だ?」と尋ねた。行者は身をかがめて礼をし、「我々は東土大唐の聖僧の弟子でございます。西方に赴き仏を拝し経典を求める途中、この山を通りかかり、黄風大王に我が師匠を捕らえられてしまい、まだ救い出せておりません。日も暮れたので、特別にこちらのお屋敷に一夜の宿を乞う次第、どうかお手をお貸しくださいませ。」と述べた。その年寄りは礼を返し、「失礼いたしました、失礼いたしました。ここは雲多く人の少ない場所で、先ほど門を叩く声を聞き、妖狐や虎、また山の中の強盗などかと恐れ、この愚かな若造どもに、大変失礼をいたしました。まさか二人のご高僧とは存じ上げず。お入りください、お入りください。」と言った。

彼ら兄弟は馬を引き荷物を担いで中に入り、真っ直ぐに奥まで進み、馬を繋ぎ荷物を下ろして、庄屋の年寄りと挨拶を交わし座った。また老僕が茶を差し出した。茶を飲み終えると、数杯の胡麻飯が運ばれた。食事を終え、寝床を整えて休むよう言われた。行者が言うには「寝なくとも結構です。お尋ねしますが、こちらの地では目薬を売っているところはありますか?」年寄りが「どのご高僧が目を患っておられるのですか?」と尋ねる。行者は「あなた様に隠すことでもありませんが、我々出家の者は元来病など無く、目を患うということを知りません。」と答える。老人が「では、目を患っていないのに、なぜ薬を求めるのですか?」と言う。行者は「我々は今日、黄風の洞の入り口で師匠を救おうとしましたが、思いがけずあの化け物に風を吹きかけられ、私の目玉が痛み、今は少々涙がにじんでおります。それで目薬を探しているのです。」と言う。その年寄りは「善哉、善哉!あなた様、若輩でありながら、どうして嘘をつかれるのですか?あの黄風大王の風は、最も恐ろしいものです。彼の風は、春秋の風や松竹の風、また東西南北の風などとは比べものになりません。……」八戒が言うには「さぞかし、夾脳風、羊耳風、大麻風、偏正頭風といったところでしょう?」年寄りは「違う、違う。それは三昧神風と呼ばれるものだ。」と言う。行者が「どうしてそう分かるのですか?」と尋ねる。年寄りは「その風は天地を暗くし、鬼神を憂い悲しませ、岩を裂き崖を崩すほどの凶悪さで、人に吹きつければ即座に命を落とす。あなた方ももしその風に吹かれたなら、よくも生きていられたものだ。仙人でなければ、無事に済むことはない。」と答える。行者は「確かに、確かに。我々は仙人ではないが、仙人は私の後輩に当たる。この命はしばらくは死なないが、ただ吹かれて目玉が痛むだけだ。」と言う。その年寄りは「そう言うなら、あなた方も由緒ある方々だ。この地には目薬を売る店はない。老いぼれも風に涙することがあり、かつて異人に出会い、一つの処方を伝授された。名を三花九子膏と言い、あらゆる風眼を治すことができる。」と述べた。行者はこれを聞き、頭を下げて礼をし、「どうか少しばかり頂き、試してみたく存じます。」と願った。年寄りは承知し、中へ入ると、瑪瑙の小さな壺を取り出して来た。栓を抜き、玉の簪で少量をすくい、行者に点眼し、目を開けずに安心して眠り、明朝には治ると言った。点眼が終わると、石の壺をしまい、そのまま小僧どもを連れて奥へ下がった。

八戒は包みを解き、寝具を広げて行者に寝るよう勧めた。行者は目を閉じて手探りで動き回る。八戒は笑って「先生、あなたの杖はどうしました?」と言う。行者は「この糠食らいの間抜けめ、俺を盲人扱いする気か。」と言う。その間抜けはくくくと笑いながら眠ってしまった。行者は寝台に座り、神功を巡らせ、三更を過ぎてようやく横になった。

いつしか五更も明けようとしていた。行者は顔をぬぐい、目を開けて言うには「確かに良い薬だ、普段より百倍もはっきり見える。」と。そして振り返って後ろを眺めると、あら!どこにも家屋や窓はなく、ただいくつかの老いた槐と高い柳があり、兄弟たちは緑の芝生の上に寝ていた。その八戒が目を覚まして「兄貴、何を騒いでいるんだ?」と言う。行者は「目を開けて見てみろ。」と言う。間抜けが突然顔を上げ、家が無くなっているのを見て、慌てて飛び起き「俺の馬は?」と言う。行者は「木に繋いであるのがそうじゃないか。」と言う。「荷物は?」行者は「お前の頭の側にあるのがそうじゃないか。」と言う。八戒は「この家の連中も本当に怠け者だな。引っ越すなら、どうして一声かけてくれないんだ。俺の老猪が知っていれば、せめて茶菓子でも持たせてやれたのに。きっと戸籍を隠すためで、里長に知られるのを恐れて、夜のうちに引っ越したんだろう。──おい!我々も眠りすぎだ、どうして彼の家が家を壊す音に、響きすら聞こえなかったんだ?」行者はくすくす笑って「間抜けめ、騒ぐな。あの木に貼ってある紙札は何だ?」八戒は前に進み、手でそれを剥がすと、そこには四行の偈が書かれていた:

庄居は俗人の居にあらず、護法伽藍が廬を点化す。

妙薬を君に与えて眼の痛みを医す、心を尽くして怪を降ろせ、躊躇することなかれ。

行者は「この強情な神々め、あの龍馬を替えてから、一度も点検していなかったのに、またしても虚仮を見せおる。」と言う。八戒は「兄貴、威張るなよ。彼らがどうしてお前の点検に従うものか。」と言う。行者は「兄弟、お前は知らないだろう。この護教伽藍、六丁六甲、五方揭諦、四値功曹は菩薩の法旨を奉じて、密かに我が師匠を守っているのだ。あの日名乗り出てから、このところお前がいて、彼らを使うことがなかったので、点検しなかっただけだ。」と答える。八戒は「兄貴、彼らは法旨を奉じて密かに師匠を守っているのだから、姿を現してはならず、それゆえに仙庄を点化したのだ。彼らを責めるな。昨日もお前の目に薬を塗ってくれたし、我々に一食の斎飯を世話してくれた、まさに心を尽くしたと言える。彼らを責めずに、まずは師匠を救いに行こう。」と言う。行者は「兄弟の言う通りだ。ここからあの黄風の洞の入り口までは遠くない。お前はまず動くな、林の中で馬を監視し荷物を守っていろ。老孫が洞の中へ探りに行き、師匠の行方を確かめ、その後で奴と戦う。」と言う。八戒は「それが良い。生死の確かな知らせを取ろう。もし師匠が死んでいれば、各自で別の道を探すがいい。もし生きていれば、我々は力を尽くそう。」と言う。行者は「馬鹿なことを言うな、行ってくる。」と言う。

彼は身を一躍させ、真っ直ぐにその門前に至った。門はまだ閉ざされ、中は眠っている。行者は門を叩かず、妖怪を驚かせることもせず、印を結び、呪文を唱え、身を震わせて一匹の花脚の蚊に変じた。実に小柄である。詩に証拠がある。詩に曰く:

擾擾たる微形に利き喙、嘤嘤たる声は細くして雷の如し。蘭房紗帳に善く通い随い、正に炎天の暖気を愛す。

ただ煙と扇を恐れ、偏に燈火の光を憐れむ。輕輕小小にして忒に鑽り疾く、飛んで妖精の洞に入る。

見ると、門を守る小妖が鼾をかいて眠っている。行者はその顔に一刺しすると、小妖は寝返りを打って目を覚まし、「おいおい!なんて大きな蚊だ、一刺しで大きな瘤ができた。」と言う。ふと目を開けて「夜が明けた。」と言う。また、ぎいという音と共に、二の門が開いた。行者はぶんぶんと飛び込むと、その老妖が各門に注意するよう言い含め、一方で武器を整えているところを見た。「昨日のあの風で孫行者が死ななかったかもしれない、奴は今日必ず来るだろう。来たならば、必ず命を絶ってやる。」と言っている。

行者はこれを聞くと、またもやその堂を飛び越え、まっすぐに奥へと向かった。すると一重の門が固く閉ざされているのが見えた。行者は門の隙間から中に潜り込むと、そこは大きな空き園で、あちらの定風柱には縄で縛られた三蔵法師がいた。その師父は涙をぼろぼろと流し、心の中ではただ悟空と悟能のことばかりを思い、彼らがどこにいるのかもわからなかった。行者は羽を止め、彼の禿げ頭にぴたりととまって、「師父」と呼びかけた。長老はその声を聞きつけ、「悟空よ、お前が恋しくてたまらぬ。お前はどこで私を呼んでいるのか」と言った。行者は言った、「師父、私はあなたの頭の上におります。心配なさるな、少しも憂えることはありません。我々は必ず妖怪を捕まえて、あなたの命を救わねばなりません」。三蔵法師は言った、「弟子よ、いつになったら妖怪を捕まえられるのだ」。行者は言った、「あなたを捕らえた虎の化け物は、すでに八戒が打ち殺しました。ただ、老妖の風の勢いが手ごわいのです。おそらく今日中に、必ず捕まえてみせます。ご安心なさって泣かずに、私は行って参ります」。

そう言い終えると、ぶんぶんと音を立てて前に飛んでいった。するとあの老妖が上座に座り、ちょうど各部署の頭目たちを点検しているところだった。また、洞の前に一人の小妖がいて、令字旗をひと振りして、厅に飛び込んで報告した。「大王様、私が山を巡っておりましたところ、門を出たばかりで、長い口と大きな耳の和尚が林の中に座っているのを見つけました。もし私が逃げ足が速くなければ、ほとんど捕まるところでした。しかし、昨日の毛深い顔の和尚は見かけませんでした」。老妖は言った、「孫行者がいないのか、おそらく風に吹き殺されたのだろう。そうでなければ、どこかに助けを求めに行ったのだ」。衆妖が言った、「大王様、もし本当に吹き殺されたのなら、我々の幸運です。ただ、もし吹き殺されずに、神兵を連れて来られたら、どうしたらよいのでしょうか」。老妖は言った、「何の神兵を恐れることがある。我が風の勢いを鎮められるものは、霊吉菩薩が来る以外にない。それ以外は何も恐れるに足らぬ」。

行者は梁の上にしゃがんで、この言葉を聞くと、心の中で非常に喜んだ。すぐに身を翻して飛び出し、本来の姿を現して林の中に来て、「兄弟」と呼びかけた。八戒が言った、「兄貴、どこに行っていたんだ?さっき令字旗を持った妖精を一人、追い払ったぞ」。行者は笑って言った、「お前のおかげだ、お前のおかげだ。老孫は蚊に化けて、あの洞の中に潜入して師父の様子を探ったんだ。すると師父はあの定風柱に縛られて泣いていた。老孫は泣くなと指示しておいた。それから梁の上に飛んで行って聞いていると、あの令字旗を持った妖精が息を切らせて走り込んで来て報告したんだ。お前に追い払われただけで、私のことは見えていなかった。老妖はでたらめな推測をして、老孫は風に吹き殺されたとか、神兵を呼びに行ったとか言っていた。ところが、自分で一人の人物を言い漏らしたんだ。素晴らしい、素晴らしい」。八戒が尋ねた、「誰のことを言い漏らしたんだ?」行者は言った、「何の神兵を恐れることがある、我が風の勢いを鎮められるのは霊吉菩薩が来る以外にない、と言っていた。——だが、霊吉がどこに住んでいるのかは知らん」。

相談していると、大路の脇から一人の老公公が現れた。さて、その様子はいかなるものか:

体は健やかで杖もつかず、氷のような白い鬚、雪のような白い髪が蓬と乱れる。金の花が目を輝かせ、瞳は朦朧とし、痩せた骨と衰えた筋だが、かえって頑強である。

腰をかがめ頭を垂れて緩やかに歩き、太い眉と赤い顔は童のよう。その容貌は人に褒められ、まるで寿星が洞から出てきたかのようだ。

八戒はこれを見て非常に喜び、「兄貴、常に言うだろう、『山の下の道を知りたければ、行き来する人に尋ねよ』と。お前が行って一声聞いてみるのはどうだ?」と言った。大聖は果たして鉄の棒をしまい、衣の襟を整えて前に進み、「老公公、お尋ね申し上げます」と呼びかけた。その老者は半ば答え、半ば答えずに礼を返して言った、「お前はどこの和尚だ?この野原で、何事があるのか?」行者は言った、「我々は経を取りに行く聖僧です。昨日ここで師父を失いまして、特地に公公に一つお尋ねします:霊吉菩薩はどこに住んでおられますか?」老者は言った、「霊吉は真南の方向におられる。そこまではまだ三千里の道のりがある。一つの山があり、名を小須弥山と言う。その山の中に道場があり、菩薩が経を説く禅院である。お前たちは彼の経を取りに行くのか?」行者は言った、「彼の経を取りに行くのではありません。ある事で彼に頼みたいのです。どの道を行けばよいのか知りません」。老者は手で南を指して言った、「この羊腸の小道がそれだ」。その言葉で孫大聖が振り返って道を見た隙に、その公公は清風と化して、あっという間に消え去った。ただ路傍に一通の簡帖が残され、そこには四句の頌があった:

上告げる斉天大聖聞け、老人はこれ李長庚。

須弥山に飛龍杖あり、霊吉当年に仏兵を受く。

行者は帖を受け取り、身を翻して山下へと道を下りた。八戒が言った、「兄貴よ、我々はここ数日運が悪すぎる。この二日間、昼間に幽霊を見ている。あの風に化けて去ったじいさんは誰だ?」行者は帖を八戒に手渡し、一読して言った、「李長庚とは誰だ?」行者は言った、「それは西方太白金星の名号だ」。八戒は慌てて空に向かって拝し、「恩人、恩人よ。老猪はもし金星が玉帝に奏上してくださらなければ、命がどうなっていたかわからなかった」と言った。行者は言った、「兄弟よ、お前も恩を忘れずにいるようだな。だが、顔を出すな。ただこの林の奥に隠れて、行李と馬をしっかりと見張っていろ。老孫が須弥山に行って、菩薩を招いてくるから」。八戒は言った、「わかった、わかった。お前はとにかく早く行け。老猪は亀の術を覚えた。縮むべき時には頭を縮める」。

孫大聖は空に跳び上がり、筋斗雲に乗って、まっすぐに真南の方向へと向かった。その速さは実に素早く、彼がうなずく間に三千里を越え、腰をひねるとさらに八百里余りを過ぎた。しばらくして、一つの高山が見え、山の中腹からは祥雲が現れ、瑞気がひしめいていた。山の窪みには確かに一つの禅院があり、鐘や磬の音が悠揚に聞こえ、また香煙が渺渺と立ち上るのが見えた。大聖は門前に至り、一人の道人を見た。首に数珠をかけ、口に仏を唱えている。行者は言った、「道人、お願いします」。その道人は身をかがめて礼を返し、「どちらからおいでのお方様ですか」と言った。行者は言った、「ここは霊吉菩薩が経を説かれる場所か?」道人は言った、「ここがそうです。何か御用で?」行者は言った、「あなた様に一つ、伝えて頂きたい。私は東土大唐皇帝の御弟である三蔵法師の弟子、斉天大聖孫悟空行者と申す者です。今、ある用事があって、菩薩にお目通りしたいのです」。道人は笑って言った、「お方様は字が多く言葉も多いので、私はすべてを覚えきれません」。行者は言った、「お前はただ、唐僧の弟子の孫悟空が来た、と言えばよい」。

道人はその言葉に従い、講堂に上がって伝えた。その菩薩はすぐに袈裟をまとい、香を焚いて迎えた。この大聖がようやく足を踏み入れて門に入り、中を見渡すと、そこには:

満堂の錦繍、一室の威厳。衆の門人は声を揃えて《法華経》を誦し、老いた班首は軽やかに金の磬を打つ。仏前の供え物は、全てが仙果仙花;案上に並ぶものは、全てが素菜素品。輝く宝の蝋燭は、条々の金の焰が虹に向かって射す;濃やかな真の香は、道道の玉の煙が彩雲を巻き上げる。まさに経を講じ終えて心閑かにして定に入り、白雲は片片と松の梢を巡る。静かに慧の剣を収めて魔頭を断ち、般若波羅密は善会に高く通ずる。

その菩薩は衣を整えて出てきて迎えた。行者は堂に上がり、客座に着くと、すぐに茶を出すよう命じられた。行者は言った、「茶は結構です。ただ、私の師父が黄風山で難に遭っております。特地に菩薩の大いなる法力をお借りして、妖怪を降伏させ、師父をお救いいただきたいのです」。菩薩は言った、「私は如来の法令を受けて、ここで黄風怪を鎮め守っている。如来は私に一粒の定風丹と一振りの飛龍宝杖を下さった。当時、私は彼を捕らえ、その命を許し、放って本性を隠して山に帰らせ、生き物を傷つけ禍をなすことを許さなかった。彼が今日、あなたの師父を害そうとしているとは、教令に背くことであり、これは私の罪過である」。その菩薩は行者を留め、斎飯を整えて語らおうとしたが、行者は切に辞退し、すぐに飛龍杖を取り、大聖と共に雲に乗った。

しばらくして、黄風山に到着した。菩薩が言った。「大聖よ、この妖怪は我を少々恐れておる。我は雲中に留まり、そなたが下りて挑発し、彼を誘い出せ。そうすれば我が法力を使える。」行者はその言葉に従い、雲頭を下ろし、問答無用で鉄棒を抜き放ち、彼の洞門を打ち破った。叫んで言った。「妖怪、我が師匠を返せ!」慌てた門番の小妖が急いで報告した。その妖怪が言った。「この禿猿、実に無礼極まりない。全く従う気がないばかりか、我が門を打ち破るとは。今出て行き、一風吹かせて必ず彼を吹き殺してやる。」相変わらず甲冑を整え、手に鋼叉を携え、再び門を出た。行者を見るや、言葉も交わさず、叉を捻って胸をめがけて突いた。大聖は身をかわして避け、棒を掲げて顔面に反撃した。戦うこと数合も経ず、妖怪は振り返り、巽の方角に向かい、口を開けて風を呼ぼうとした。すると半空で、霊吉菩薩が飛龍宝杖を投げ下ろし、何やら呪文を唱えた。するとそれは八爪の金龍となり、バリバリと音を立てて両爪を広げ、一気に妖精を掴み、頭を掴んで二、三度山石の崖のほとりに打ちつけた。すると本相を現し、それは黄毛の貂鼠であった。

行者が駆け寄り、棒を振り上げて打とうとしたが、菩薩に止められて言われた。「大聖よ、彼の命を奪うな。我は彼を連れて如来の許へ行かねばならぬ。」そして行者に向かって言った。「彼はもともと霊山の麓にいた悟りの道を得た鼠で、瑠璃灯の清油を盗み、灯りを暗くしたため、金剛に捕らえられるのを恐れて逃げ出し、ここで化けて妖怪となったのだ。如来が彼を照らし見たところ、死罪には当たらぬゆえ、我に管轄を命じられたのだが、彼は生類を傷つけ罪を重ねたので、霊山に連れて行くのだ。今また大聖に逆らい、三蔵を陥れた。我は彼を連れて如来に会わせ、罪を明らかにして、この功績とするのだ。」行者はこれを聞き、菩薩に礼を述べた。菩薩が西へ帰ったのは言うまでもない。

さて猪八戒はその林の中で、行者を思い起こしていたが、山の麓で叫ぶ声が聞こえた。「悟能兄弟よ、馬を牽き、荷を担いで来い。」あの鈍物は行者の声と知り、急いで準備をして林の外に走り出て、行者を見て言った。「兄貴、事はどうなった?」行者が言った。「霊吉菩薩を招き、飛龍杖を使わせて妖精を捕まえた。もとは黄毛の貂鼠の化け物で、彼に連れられて霊山へ如来に会いに行ったのだ。お前と俺で洞に行って師匠を救おう。」あの鈍物はようやく喜び勇んだ。

二人は中に突入し、その巣の中の一匹の狡兎、妖狐、香獐、角鹿を、一振りの釘鈀と鉄棒で全て打ち殺し、それから後園に行って師匠を救い出した。師匠が門を出て尋ねた。「お前たち二人は、どうやって妖精を捕まえたのか? どうやって我を救ったのか?」行者は霊吉を招いて妖を降伏させた次第を詳しく述べた。師匠は感謝してやまなかった。彼ら兄弟は洞の中の精進物を取り出し、茶と飯を用意して食べ、それから門を出て大路を探し、西へ向かった。

はたしてその後どうなるかは、次回の分解を聞かれよ。