第七十八回 比丘憐子遣陰神 金殿識魔談道徳
にて子を憐れみ陰神を遣わし 金殿にて魔を識り道徳を談ず
一念起こりて百魔を引き起こす、修行持戒最も辛苦なり、またこれを如何ともなし難し。ただ洗い清めて塵垢なきも、束ねてつなぎ琢磨するを要す。万般の塵縁を掃き退けて寂滅に帰し、千種の妖怪を蕩除して虚しく歳月を過ごすなかれ。教えて跳び出でしめよ牢籠の圈套より、功行円満して大羅天に飛昇せん。
さて孫大聖、心を尽くし、如来を請じて衆の妖怪を収め、三蔵师徒の災いを解脱し、獅駝城を離れて西へ進む。また数月を経て、既に冬に至れり。ただ見る、
嶺上の梅は破れんとして玉の如く、池中の水は漸く凍りて氷と成る。
紅葉は既に飄落し、青松の色は更に鮮やかなり。
淡淡たる雲は飛んで雪の降らんとし、枯草は山間に伏して地平に斉し。
満眼の寒光は迥いに異なり、陰冷の気は骨に透りて寒涼なり。
师徒、寒さを冒し、冷風を凌ぎ、夜は雨の地に宿り、風餐露飲す。正に歩み行くに、又一座の城池を見る。三蔵問いて曰く「悟空、彼方はまた何の地ぞや。」行者曰く「到りて自然に知るべし。もし西の王都ならば、関文を換えん。もし府州県ならば、直ちに過ぎ行かん。」
师徒、言い終えず、已に城門の外に到れり。三蔵、馬を下り、一行四人、月城に入る。一老兵が陽の当たる壁の下に、風に倚りて眠るを見る。行者、歩み寄りて之を揺り動かし、呼びて曰く「長官。」那老兵、猛然と驚き醒め、恍惚として目を開き、行者を見るや、連忙ち跪きて磕頭し、叫びて曰く「爺爺。」行者曰く「汝、胡乱に驚き怪しむことなかれ。我れは凶神に非ず、汝、我れを爺爺と叫ぶは何ぞ。」老兵、磕頭して曰く「汝は雷公爺爺なり。」行者曰く「胡乱なり。我れは東土大唐より西天に取経に往く僧なり。剛だ此処に到り、地名を知らず、汝に一声問う。」那老兵、之を聞き、此に方って心を定め、欠伸を打ち、爬き起き、腰を伸ばして曰く「長老、長老、小人の罪を恕せ。此の地、元は比丘国と曰い、今は改めて小子城と曰う。」行者曰く「国中に帝王有るか。」老兵曰く「有り、有り、有り。」行者、即ち身を転じて唐僧に對して曰く「師父、此処は元は比丘国なり。今は改めて小子城と曰う。ただ改め名づくるの縁故を知らず。」唐僧、疑いて曰く「既に比丘と曰い、又何ぞ小子と曰う。」八戒曰く「想うに比丘王死し、新たに立ちたる王位は小子なる故、小子城と曰うならん。」唐僧曰く「此の理無し、此の理無し。我等、暫く入り、街に到りて再び問わん。」沙僧曰く「正に是なり。那老兵は一には知らず、二には大哥に嚇されて胡乱に言うなり。我等、城に入りて問わん。」
又、三重の門裏に入り、四通八達の大街鬧市に到りて観るに、衣冠整い、人物清秀なり。ただ見る、
酒樓歌館には話声喧しく、彩鋪茶房には高く帘を掛く。
千家萬戸の生意興隆、六街三市の財源広く進む。
金を買い錦を販る人多きこと蟻の如く、名を争い利を奪いて只だ銭財の為。
礼儀庄重にして風景繁盛、河清海晏の太平の年季。
师徒四人、馬を牽き、担を挑み、街市に在りて暫く行くこと、繁華の景象を見尽くせず、只だ家家戸戸の門口に一つの鵞籠を置くを見る。三蔵曰く「徒弟よ、此の人々、皆鵞籠を門口に置くは、是れ何の故ぞ。」八戒、之を聞き、左右を看れば、果して是れ鵞籠、五色彩緞の遮幔を排列す。呆子笑いて曰く「師父、今日は想うに黄道吉日、婚姻会友に適し、皆な礼を行ずるならん。」行者曰く「胡乱なり、何ぞ即ち家家皆な礼を行ずるや。中に必ず縁故有り、我れ上前して看ん。」三蔵、之を扯りて曰く「汝、行くこと莫れ。汝の嘴臉は醜陋なり、人をして汝を怪しましむるを恐る。」行者曰く「我れ変化して様子をなさん。」
好大聖、诀を掐み、咒語を念じ、身を摇りて変じ、一の蜜蜂と作り、翅を展げ、近前に飛び到り、幔裏に鑽り入りて観るに、原來中に坐するは小孩児なり。更に第二の家の籠裏を看るも、亦是小孩児なり。連ねて八九家を看るも、皆是小孩児なり。皆是男孩にして、女子無し。或は籠中に坐して玩び、或は中に坐して啼哭す。或は果子を食い、或は或は睡り或は坐す。行者、看終わり、原身を現じ、唐僧に報じて曰く「那籠裏は是れ些の小孩子、大なるは七歳に満たず、小なるは五歳のみ、何の縁故か知らず。」三蔵、之を聞き、疑虑定まらず。
忽然街を転じて一の衙門を見る、是れ金亭館駅なり。長老、喜びて曰く「徒弟、我等、暫く此の駅館に入らん。一には其の地方を問い、二には馬匹を歇息せしめ、三には天晚にして宿を投ぜん。」沙僧曰く「正に是、正に是、快く入らん。」四人、喜びて入る。只だ見るに、那当官の者、果して駅丞に報じ、門に入り、各々相見る。坐を叙して定まり、駅丞問いて曰く「長老、何れの処より来たる。」三蔵曰く「貧僧は東土大唐より西天に取経に遣わされ、今、貴地に到る。関文有り、理に鑑証すべきも、暫く貴館に借りて一晩歇息せん。」駅丞、即ち人に命じて茶を看しむ。茶を飲み終わり、即ち供應を辦理し、当直の者に命じて款待を安排せしむ。三蔵、謝し、又問いて曰く「今、朝に入りて駕に謁し、関文を鑑証するを得んか。」駅丞曰く「今晚は能わず、須く明日の早朝を待つべし。今晚は暫く本衙門に在りて寬住せよ。」
頃刻の後、安排定まり、駅丞、即ち四人を請じて共に斎飯を食わしむ。又、手下の人に分付して客房を掃打し安歇せしむ。三蔵、感激して尽くること無し。坐し下りて、長老曰く「貧僧、一の明白ならざる事有りて請教せん、煩いて指示を請う。貴処、孩子を養育するは、知らず如何に看るか。」駅丞曰く「天に二日無く、人に二理無し。孩童を養育するは、父の精血、母の血脉に頼り、十月懐胎し、時に到りて生まる。生まれて後、三年哺乳し、漸く体形を長ず。何ぞ知らざること有らん。」三蔵曰く「尊駕の言に拠れば、我が処と同じく異なること無し。但だ貧僧、城に入る時、街上の人家各々一の鵞籠を設け、皆小孩を中に藏するを見る。此の事、明白ならず、故に敢て問う。」駅丞、近づき低声に曰く「長老、管ずるなかれ、問うなかれ、亦理るなかれ、説くなかれ。請うて安歇し、明早走路せよ。」長老、之を聞き、一把に駅丞を扯り、定めて問い明かさんと要す。駅丞、首を摇り手を擺い、只だ叫びて曰く「謹慎に話せ。」三蔵、愈放さず、執りて定めて詳を問わんと要す。駅丞、已むを得ず、只得くすべての当官人員を屏退す。独り灯光の下に在りて、悄悄として曰く「方に問う所の鵞籠の事は、是れ当今国王無道の事なり。汝只管它を問うて何ぞ。」三蔵曰く「何をか無道と曰う。必ず明白に説きて、我をして心を放たしめよ。」駅丞曰く「此の国、元は比丘国なり。近来、民謡有りて、改めて小子城と作る。三年前、一の老人有り、道人に装い成し、一小女子を帯び、年才だ十六歳。那女子、容貌嬌美、相貌は観音の如く、当今に進貢す。陛下、其の美色を愛し、宮中に寵幸し、封じて美后と為す。近来、三宮娘娘、六院妃子を、皆正眼に看ず。昼夜を分かたず、貪歡止まず。今、弄得りて精神疲倦消瘦、身体虚弱瘦損、飲食減少、命旦夕に在り。太医院、良方を遍く査すも、治療する能わず。那女子を進献する道人、我主の封誥を受け、国丈と称す。国丈、海外の秘方有り、能く壽を延ぶ。先だって十洲、三島に往きて薬を採り、已に備わり完す。ただ薬引子、厲害なり。単に一千一百一十一個の小児の心肝を用い、煎湯して薬を服む。服する後、千年不老の効有り。這些の鵞籠裏の小儿は、皆選び良き者を、裏に養う。人家の父母、王法を恐れ、敢て啼哭せず、故に謠言を伝播し、小儿城と曰う。長老、明早、朝に到らん。只だ去って関文を換え、此の事を提起するを得ず。」言い終わり、身を抽きて退く。
長老は骨も軟らかく筋も麻痺するほど恐ろしくなり、頬を伝う涙を止められなかった。突然、声をあげて叫んだ。「暗君、暗君よ!お前が色欲にふけり美を愛したばかりに、病を招き、どうしてこれほど多くの幼い子らの命を無惨に奪うのか。苦しい、苦しい、痛くてたまらぬ!」これを詩に証する。詩に曰く:
邪主は無知ゆえ正道を失い、歓楽に溺れて省みず身を害す。
永寿を求めて童の命を残虐にし、天災を解かんとして小民を殺す。
僧は慈悲を発して断ち難く、官は利害を言うも聞くに堪えず。
灯前涙を洒きて長く嘆息し、参禅して仏に向かう人を痛み倒す。
八戒が進み出て言った。「師父、どうなさったのです? 人の棺をわが家に担ぎ込んで泣くようなもの。お悩みになるな。常套句に言う、『君が臣に死を命じれば、臣が死なねば不忠、父が子に死を命じれば、子が死なねば不孝』と。奴が傷つけるのは自分の民、あなたに関係あることか? まずは衣を脱いで寝なされ。古人の心配をしてもしようがない。」三蔵は涙を流して言った。「弟子よ、お前は慈悲心のない者だ。我ら出家の者は功を積み行いを重ねる。第一に大切なのは方便を施すことだ。どうしてこの暗君がひたすら勝手放題に振る舞うのか? 人の心臓や肝を食べて寿命が延びるなど、かつて聞いたこともない。このようなこと、どうしてわしが心を痛めずにいられようか?」沙悟浄が言った。「師父、まずはお心を痛められませぬよう。明日、通関文牒を交換する折に、国王に直接申し上げてみてはいかがでしょうか。もしお許しが得られねば、あの国丈という者がどんな姿か、見極めましょう。もしかすると、あの国丈は化け物で、心臓や肝を食べたくて、わざとこのような策を巡らせたのかもしれませぬ。」
孫悟空が言った。「悟浄の言う通りだ。師父、まずはお休みなされ。明日は、老孫がご一緒に朝に参り、国丈の善悪を見極めよう。もし人間ならば、よほど邪な道に逸れて正道を知らず、ただ薬を採ることを真実と思っているのだろう。老孫が先天的な要旨を用いて、正道に帰依するよう教化してやろう。もし化け物ならば、これを捕らえて国王に見せ、心を清らかにし欲を少なくし、身体を養うよう教え、決してあの幼子たちの命を傷つけさせはせぬ。」三蔵はこれを聞いて、急いで身をかがめ、かえって孫悟空に礼をして言った。「弟子よ、この考えは極めて良い、極めて良い。ただ、暗君に会ったからといって、すぐにこの件を問いただすわけにはいくまい。あの暗君が軽重をわきまえず、虚言で責めてきたらどうする?」孫悟空は笑って言った。「老孫には法力がある。今すぐ鵞籠の中の幼子たちをこの城から連れ去ってしまおう。明日、奴に心臓を取るものがなければ、地元の役人が自然と上奏するだろう。あの暗君は必ず旨を下し、あるいは国丈と相談し、あるいは別に選び直すだろう。その時、この機会に乗じて上奏すれば、決して我々のせいにはなるまい。」三蔵は大いに喜んだ。また言った。「今、どうやって幼子たちを城から離すのか? もし本当に逃がしてやれるなら、まことによき弟子の天大なる功徳だ。早くせねば、少しでも遅れれば、間に合わぬかもしれぬ。」孫悟空は神威を奮い起こし、すぐに立ち上がり、八戒と沙悟浄に命じた。「師父にお付きして座っておれ。わしが法を施すから、お前たちはただ陰風が吹くのを見ておればよい。それが幼子たちが城外に出た証拠だ。」三人は声を揃えて唱えた。「南無救生薬師仏! 南無救生薬師仏!」
この大聖は門外に出ると、指笛を吹き、半空に飛び上がり、印を結び、真言を唱え、「オン浄法界」と一声叫ぶと、城隍、土地、社令、真官、ならびに五方掲諦、四値功曹、六丁六甲、護教伽藍等の諸神を呼び寄せ、皆を空中に集めて、彼に礼をして言った。「大聖、夜分にお呼びになるのは、どのような急用でございますか?」孫悟空が言った。「今、比丘国を通りかかったのだが、あの国王は無道で、妖邪の言うことを聞き入れ、幼子の心臓肝を取って薬の材料にし、不老長寿を望んでいる。我が師父はこのことを非常に忍びなく思い、命を救い化け物を滅ぼそうとされた。そこで老孫が特に諸君を招き、それぞれ神通を発揮して、この城中の各街路の家々にある鵞籠の中の幼子たちを、籠ごと城外の山陰や林の奥深くに運び出し、一両日隠し、彼らに果物を与えて飢えさせず、さらに密かに守護し、驚かせて泣かせぬようにしていただきたい。我が邪魔を除き国を治め、王を正道に導き、去る時には、送り返してくれ。」
諸神は命令を聞き、すぐにそれぞれ神通を発揮し、雲を降ろした。城中には陰風が滾滾と吹き荒れ、惨霧が漫々と立ち込めた:
陰風は一天の星を暗く吹き、惨霧は千里の月を昏く覆う。初めはなお悠悠蕩蕩としていたが、後に轰轰烈烈となる。悠悠蕩蕩、それぞれ門戸を尋ねて幼子を救いに行き、烈烈轟轟、皆鵞籠を見て骨肉を救い取る。冷気は人を侵してどうして頭を出せよう、寒気は体を透り衣服は鉄の如し。父母は空しく慌てふためき、兄嫂は皆悲しみ嘆く。地に満ちて陰風巻き起こり、籠は神によって奪い去られる。この一夜、たとい孤独に悩まされとも、夜明けには皆喜び合う。
詩に証する。詩に曰く:
仏門の慈悲は古より多く、正善の成功は摩訶を説く。
万聖千真、皆徳を積み、三皈五戒、和を講ず。
比丘一国、君の乱に非ず、千名の小子、命の誤り。
行者、師の故に同じく救護す、この陰功は勝れて波羅に勝る。
その夜、三更の頃、諸神は鵞籠を各所に運び、安置し収めた。
孫悟空は祥光を押し下げ、まっすぐに駅亭に来た。聞けば、三人はまだ「南無救生薬師仏」と唱えている。彼も心の中で密かに喜び、進み出て叫んだ。「師父、わしが来た。陰風が吹いたのはどうだ?」八戒が言った。「良い陰風だ。」三蔵が言った。「幼子を救う件は、どうなった?」孫悟空が言った。「既に一人残らず救い出してやった。我々が出発する時に送り返そう。」長老は何度も礼を言い、ようやく就寝した。
夜が明け、三蔵が目を覚ますと、身支度を整えて言った。「悟浄、わしは早朝の朝議に乗じて、通関文牒を交換に行く。」孫悟空が言った。「師父、お一人でお行きになれば、事がうまく運ばぬかもしれません。老孫もご一緒に参り、あの国丈が邪か正かを見極めましょう。」三蔵が言った。「お前が行くとなれば、礼をせぬだろう。国王の咎めを受けるのではないか。」孫悟空が言った。「わしは姿を現さず、密かにお供して、保護いたしましょう。」三蔵は大いに喜び、八戒と沙悟浄に行李と馬の見張りを命じ、ようやく歩み出した。この駅丞が再びやって来て挨拶し、この長老が装束を整えるのを見ると、昨日とはまた大いに異なっていた。見れば:
身に一領の錦襴異宝仏袈裟をまとい、頭に金頂毘盧帽を戴く。九環の錫杖を手に執り、胸中に一点の神光妙を蔵す。通関の文牒は緊に身に従い、包裹袋の中には錦の套を纏う。行く様は阿羅の世に降りしに似て、真に活仏の好容貌の如し。
その駅丞が挨拶を終えると、耳元に寄せて小声で、くれぐれも余計なことに構わぬようにと言った。三蔵はうなずいて承知した。大聖は門の脇にひらりと身を隠し、呪文を唱え、身を揺すって一変し、蟭蟟虫となり、ぶうんと一声、三蔵の帽子の上に飛び乗った。館駅を出て、まっすぐに朝中へ向かった。
朝門の外に着き、黄門官を見かけて、礼をして言った。「貧僧は東土の大唐より西天に経を取りに遣わされた僧でございます。今、この地に参りました。道理により通関文牒を交換したいと存じ、謁見を願い、取り次ぎをお願い申し上げます。」その黄門官は確かに取り次いだ。国王は喜んで言った。「遠方より来た僧は、必ずや道行があるであろう。」入内を命じた。黄門官は再び旨を奉じ、長老を中に招き入れた。長老は階段の下で朝見を終え、さらに殿上に上がって座を賜るよう請われた。長老は再び恩に謝して座った。見れば、あの国王は容貌が痩せ衰え、精神は倦み疲れている。手を挙げれば、揖譲の礼も失い、口を開けば、声は絶え絶えである。長老が文牒を差し出すと、その国王は目がかすみ、何度も見直してから、ようやく宝印を取り、花押を押し、長老に渡した。長老はそれを収めた。
国王がまさに経を取りに行く理由を尋ねようとしたところ、当駕官が奏上した。「国丈様がお越しでございます。」その国王は近侍の小宦官に支えられ、苦労して竜床から降り、身をかがめて迎えた。慌てて長老は急ぎ立ち上がり、側に寄って立った。振り返って見れば、もとは一人の老道士が、玉の階段の前から、ゆらゆらと歩いて入って来る。見れば:
頭には淡い鵞黄色の九錫雲錦紗巾を戴き、身には箸頂梅沈香綿絲鶴氅をまとい。腰には纫藍三股の攒り絨帯を締め、足には麻と葛の経緯の雲頭履を履く。手には一本の九節枯藤盤龍拐杖を執り、胸には一つの描龍刺鳳団花錦囊を掛く。玉の面は光沢多く、蒼き鬚は顎の下に漂う。金の瞳は火焰を飛ばし、長き目は眉の梢を過ぐ。行くに雲は歩に従い、逍遥に香霧は繞る。階下の衆官は皆拱手して迎え、斉しく国丈が王朝に入るを呼ぶ。
その国丈は宝殿の前に到るや、礼もせず、昂然として真っ直ぐに殿上に進み出た。国王は身を乗り出して言った。「国丈、仙駕、今日は早くお越しくださり喜ばしい。」とて、すぐに左手の繡墩に坐らせた。
唐僧は一歩進み出て、身を屈めて礼をなし、「国丈大人、貧僧がご挨拶申し上げます。」と言った。国丈は端然と高く坐ったまま、礼も返さず、顔を国王に向けて言った。「僧家はどこから来たのか。」国王が言う。「東土の唐の国から、西天に経を求めに遣わされた僧で、今日、関文の照合に参ったのです。」国丈は笑って言った。「西方の路は、暗黒々として、何の良さがあるというのか。」唐僧が言う。「古来より西方は極楽の勝境と申します。どうして良くないことがありましょう。」国王が問うて言う。「朕は上古の言葉に、『僧は仏家の弟子なり』と聞く。そもそも僧たる者は不死を得られるのか、仏を信じて長生できるのか、知りたいものだ。」唐僧は聞くや、急ぎ合掌して答えた。
「僧と為す者は、万般の因縁を皆放下すべし。本性を了悟する者は、諸法皆空なり。大智慧は自在に从容として、淡泊にして不生不滅の中に在り。真機は黙黙として、逍遥として寂滅の境に在り。三界は空虚にして百病は治すべく、六根は清净にして千種の煩いは窮まる。もし誠心を堅くして悟りを求めば、必ず自心を認識せねばならぬ。心が清净なれば孤独の光明が独り照らし、心が存在すれば万種の境界が皆清明なり。真の面持ちは欠くることも余ることも無く、生前に既に見るべし。幻の形は有りて終に毀るべく、分外に何をか求め索めん。修行し坐禅するは、入定の根本なり。布施し恩恵を施すは、実に修行の基礎なり。最も巧みなるは拙きに似せ、尚お事事無為を明らむべし。善く計るは籌に拠らず、ただ事事放下すべし。ただ一念動かざらしめれば、万種の修行自然に円満す。もし采陰補陽を言わば、実に謬れる話なり。丹薬を服して長寿を求めんは、実に虚妄の説なり。ただ塵緣を皆拋ち、万物の色相を空ぜよ。素朴純淨にして愛欲を減らせば、自然に長寿の窮まり無きを享くべし。」
国丈はこの話を聞いて、一笑に付した。指で唐僧を指して言う。「呵々呵、この和尚は満口の嘘を言う。寂滅の法門に在りては、必ず本性を識るを講ぜねばならぬ。お前は知らぬか、その本性は何処より滅し、枯坐して禅を参ずるは、全て盲目の修練に過ぎぬ。俗に言う、『坐る坐る坐る、お前の尻は破れる。火に炙られて、却って禍と為る。』と。更に我がこれを知らぬ。
仙人を修むる者は、骨は硬く秀で美し。大道に通ずる者は、神は最も霊妙なり。箪瓢を帯びて山に入り友を訪い、百薬を採りて世に在りて人を救う。仙花を摘みて斗笠と為し、香蕙を折りて坐る筵と為す。歌う時は手を拍ち、舞い終わりては雲の上に臥す。道法を闡揚し、太上老君の正教を弘め、符水を施し、人間の妖気を消す。天地の秀気を奪い、日月の精華を採る。陰陽を転じて丹薬凝り、水火に循いて胎息凝る。二八の陰消する時は、恍恍として惚惚たり。三九の陽長ずる時は、杳杳として冥冥たり。四季に循いて薬を採り、九転を養いて丹を煉る。青鸞に騎りて紫府に昇り、白鶴に騎りて瑶京に飛ぶ。満天の華彩を拝し、妙道の殷勤を表す。汝の静坐の禅教、寂滅の陰神、涅槃の後に臭き皮囊を留め、又た凡塵を脱せざるよりは勝れり。三教の中に上品無く、古来より道のみ独り尊しと称す。」
国王はこれを聞いて、大いに喜んだ。満朝の官員は皆喝采して言う。「良きかな『惟道独称尊』、『惟道独称尊』。」長老は皆が国丈を讃めるのを見て、勝れず恥ずかしさに堪えなかった。国王は又た光禄寺に命じて素斎を整えさせ、遠来の僧を城外の西へ送り出させるよう計らった。三蔵は恩を謝して退出した。ようやく下殿し、外へ向かって行こうとすると、行者は帽の頂から飛び降り、耳許に来て叫んだ。「師父、この国丈は妖邪でございます。国王は妖気に冒されております。先ず駅にて斎を待ち、老孫がここにて消息を聞いて参ります。」三蔵はこれを知り、一人で朝門を出て行った。これは措く。
看よ、行者は一翅に金鑾殿の翡翠屏風の中に飛んで留まった。すると官員の隊伍の中から五城兵馬官が奏して言う。「我が主、今夜一陣の冷風、各坊各家の鵞籠の中の小児を、籠ごと刮き去り、更に蹤跡も御座いません。」国王は奏報を聞き、又驚き又怒り、国丈に向かって言う。「これは天が朕を滅ぼさんとするものか。数月病重く、御医も効無く、幸いに国丈が仙方を賜り、専ら今日の午時に開刀し、これらの小児の心肝を薬引とせんと待ちしに、誰が冷風に刮き去られんとは思ったか。天が朕を滅ぼさんとするに非ずして何ぞ。」国丈笑って言う。「陛下、暫く御煩いなさいますな。これらの小児が刮き去られしは、正に天が長生を陛下に送るものにて候。」国王が言う。「明らかに籠中の小児を刮き去りしを、何ぞ却って天が長生を送ると言うのか。」国丈が言う。「我、方に朝に入りし時、一箇の絶妙なる薬引を見たり。それは一千一百一十一の小児の心に勝ること強し。小児の心は、只だ陛下の千年の寿命を延ぶるのみ。この薬引は、我が仙薬を食らえば、万々年を延ぶることを得べし。」国王は茫然として何の薬引か知らず、再三問い詰めれば、国丈やっと言う。「東土より差し遣わされし取経の和尚、我が其の器宇清净、容貌整齐なるを見るに、十世修行の真身にて、幼きより僧と為り出家し、元陽を洩らさず、小児に勝ること万倍なり。もし其の心肝を得て煎湯にし、我が仙薬を服せば、万年の寿命を保つに足らん。」この昏君、聞くや大いに信じ込み、国丈に向かって言う。「何ぞ早く言わざりし。もし果たして斯くの如く効あるならば、先に留めて、放ち去らざるべかりしを。」国丈が言う。「これ何の難きかあらん。先に光禄寺に素斎を整えさせて彼を待たせ、彼は必ず斎を食らいて出城すべし。今、急ぎ旨を伝え、諸門を閉鎖せしめ、兵を点じて金亭館駅を囲み、その和尚を捉え来たらしめ、必ず礼を以て其の心を求めよ。もし従わば、即ち剖きて取り出だし、然る後に御葬して其の屍を葬り、尚お其の為に廟を立て祭祀を享けしめよ。もし従わざれば、武を以て善を作さず、即ち縛りて剖き取り出だす。何の難きかあらん。」この昏君、其の言葉に従い、旨を伝え、諸門を閉鎖せしむ。又た羽林衛の大小官軍を遣わし、館駅を囲ましむ。
行者はこの消息を聞き、一翅に館駅へ飛び奔り、本相を現し、唐僧に向かって言う。「師父、禍がござります、禍がござります。」三蔵は正に八戒、沙僧と共に御斎を頂きていたが、忽ちこの話を聞き、三尸神は散り、七竈は煙を生じ、埃の中に倒れ、全身汗まみれ、眼は定まらず、口は言うこと能わず。慌てて沙僧が前に進み出でて支え、只だ叫ぶ。「師父、御目覚め下され、御目覚め下され。」八戒が言う。「何の禍事じゃ。何の禍事じゃ。お前がゆっくり言えば良いものを、師父を斯くも驚かせおって。」行者が言う。「師父が朝を出でられてより、老孫が振り返り見れば、あの国丈は妖精でござった。程なく、五城兵馬が来て冷風が小児を刮き去りし事を奏した。国王が煩悶しておるところへ、彼は却って喜び、『これは天が長生を陛下に送るもの』と言い、師父の心肝を薬引とし、万年の寿命を延ばさんとした。あの昏君、誣言を聞き入れ、故に精兵を点じ、館駅を囲み、錦衣官を遣わして師父を請い、心を求めんとしておる。」八戒笑って言う。「良きかな慈悲を行い、良きかな小児を救い、良きかな陰風を刮き、今度は却って禍を撞き出したぞ。」
三蔵は戦戦兢兢として起き上がり、行者を引き摺り、哀求して言う。「賢徒よ、これは如何したものか。」行者が言う。「良くせんと欲せば、大を以て小と為す。」沙僧が言う。「『大を以て小と為す』とは如何なることか。」行者が言う。「もし性命を保全せんと欲せば、師父は徒弟と為り、徒弟は師父と為りて、始めて保全すべし。」三蔵が言う。「もし我が命を救わば、喜んで徒弟、徒孫と為るを諾す。」行者が言う。「然らば、疑いを措くに及ばず。」「八戒、早く泥を和せ。」呆子は即ち釘鈀を用いて土を掘った。又た外へ水を取るを憚り、後には衣を撩げて尿を放ち、一団の臊泥を和し、行者に渡した。行者は已むを得ず、泥を一片に拍ち、己が顔に当て、猴の面の形を作る。唐僧に立ち上がり動くな、更に言うなと命ずる。唐僧の顔に貼り付け、真言を念じ、一口の仙気を吹き、「変われ」と叫ぶ。長老は即ち行者の形に変わる。彼の衣服を脱ぎ、行者の衣服を着る。行者は師父の衣服を着、指を掐り、咒語を念じ、身を揺すって唐僧の顔つきに変わる。八戒、沙僧もまた辨じ難し。
ちょうど心を合わせて装束を整え終えたところ、太鼓や銅鑼が一斉に鳴り響き、さらに槍や刀が群がっているのが見えた。何とそれは羽林衛の役人で、三千の兵を率いて館駅を取り囲んでいたのである。また、一人の錦衣の役人が駅の庭に進み出て、「東土の唐朝のご長老はどこにおられるか?」と問うた。慌てふためいた駅丞は、恐れおののいてひざまずき、「下の客間におられます」と指さした。錦衣の役人はすぐに客間に行き、「唐長老、我が王がお呼びです」と言った。八戒と沙僧は左右から偽の行者を護衛した。偽の唐僧が戸口に出て礼をし、「錦衣のお方、陛下が貧僧をお召しとは、どのようなお言葉がありましょうか?」と言うと、錦衣の役人は進み出て彼の袖をつかみ、「あなたを宮中へ連れて行くのだ。きっと用があるのだろう」と言った。ああ!まさにこれこそ:
妖邪の讒言は慈善に勝り、慈善はかえって凶禍を招く。
はたしてこの後、命がどうなるかは、次の回の解き明かしを聞かれよ。
